lilac (ページ26)

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恋しいオレンジページ26

○WINWIN

聴き慣れた音楽が聞こえたから、隙間から少しだけ覗いてみようとした。だからドアが急に開いて、わ、と声を出したAよりも、俺の方がびっくりしてしまった。

「…大丈夫ですか？」

『う、うん、大丈夫』

「ごめんなさい、誰もいないと思ってて」

『いや、今のは俺が悪いから』

額にくっついていた前髪を避けてあげようとしたけど、そういえば2人で会うのってはじめてかも。伸ばした手を中途半端に引っ込めて、くしゃりとペットボトルを潰したAに何を話そうか迷いながら、また目が合う。

「ここ使いますか？」

『え？』

「え？」

『あ、えっと、今日1人なの？』

「うん、さっきまで人は出入りしてたんですけど」

『ヘチャンたち？』

「大人たち」

少しお話しませんかと言われるまま、俺が部屋に入った瞬間にパタパタとAは走って行ってしまった。端の方にあるソファーに座って、たくさん文字が書かれたノートを見つけたけど、これって見ない方が良いやつなのかな。

「コーヒー好きですか？」

『うん？』

「そういえば好きな飲み物とか、分からなくて」

『買って来てくれたの？』

「冷たいやつで大丈夫でした？」

『あ、うん、ありがとう』

色が抜けて、蛍光灯の下にいると透けてしまいそうなくらいの色になって、この前ジェヒョンと一緒に会った時よりも、言い方が合っているか分からないけど、まさにアイドルのようだった。ソファーに背中を預けて、柔らかい髪が動く。

『誰かと練習してたの？』

「今日は1人ですよ」

『俺たちのグループのも踊れるの？』

「ちょっとずつだけど、必要なので」

『何に？』

「これからの自分に」

ヒョンたちが、やり過ぎなくらいに世話を焼いている人。同じグループじゃないから少ししか見ていないのかもしれないけど、会社でAたちを見つければテヨンイヒョンなんかは一直線にそこに向かって、Aと話をしていた。

『ジェヒョニが会いたがってたよ』

「本当？今度差し入れ持って行きますね」

『会えるだけでみんな嬉しいよ』