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○
「寝てるの？」
『うん、いつの間にか』
「長い髪も可愛いね」
『それ、起きてる時に言ってあげて』
ヘチャンが髪を掬って、睫毛が揺れる。さっきマクヒョンたちと寝転がっていた時は狭かったのに、Aが1人で眠るベッドは広くて、ここだけ時間が止まっているみたいで離れられなかった。
「こうしてるとAだね」
『ずっとAだよ』
「さっきはリラだったよ、天使ちゃん」
『それは起きてる時に言わないでね』
「分かってるよ」
思っていたよりも批判が少なかった。会社はそれで安心していたけど、少なかっただけで、何も無かった訳じゃない。マネヒョンもスタッフの人たちも、メイクのヌナたちでさえも、Aを絶対1人にしないようにと俺たちに言った。ネットを見たのか、少し怖い顔をしたマクヒョンが何も言わずにAを抱きしめた時、Aは困った顔をして、それでも大丈夫と笑っていた。
「リラを実験台にするなだって」
『…うん、見た』
「その人はリラの何を見てたんだろうね」
『うん、そうだね』
「リラは1人でも綺麗だけど、俺たちと一緒ならもっと綺麗だって、絶対その人に言わせようね」
顔を隠していたブランケットを引っ張ればAがこっちを見て、瞬きをする。何も言わずに起き上がってベッドから降りようとするから、指を握った。この手が全てを背負わないように、柔らかいままでいられるように。
「リラちゃんどこから聞いてたの？」
「長い髪も可愛いねってところから」
「全部じゃん、起きたら良かったのに」
「…タイミングが無くて」
お揃いの衣装を着て、薄いメイクをして、それでも、誰よりも輝いている。指を握っていた手を引っ張って、自分とヘチャンの間にAが座る。カメラがちょうど俺たちを映した。
「リラさん、調子はどう？」
「びっくりするくらい絶好調ですよ」
カメラが向こうを向いた瞬間、真ん中のAが俺たちを引っ張って、シーツに飛び込んだ音がする。シャンプーの匂いがした。
「ありがとう」
「急にどうしたの」
「なんとなく今、言おうと思って」
「じゃあ俺もありがとう」
「急に？」
「なんとなく今、言おうと思って？」
ため息が聞こえる。横を向いたら、2人と目が合った。宝石のような目から、何も溢れないように。
マクヒョンが俺たちを呼ぶ。いちばんに駆け出したAを見ていたら、俺たちの曲が流れた。
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作者名：yom | 作成日時：2022年12月5日 18時
