lilac (ページ12)

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宿舎に帰ればテヨンイヒョンがいて、声をかけたら顔が上がる。パソコンで見ていたのは、いつかのライブで歌っているAだった。

『ヒョンはAに会えた？』

「うん…あっ」

『やっぱりヒョンたち会ってたんだ』

「ど、ドヨンイ、これは、」

『内緒なんでしょ？分かってるよ』

ヒョンのほっとした顔で、頭の中で考えていたことが繋がった。明日また、きっとAの名前を聞くんだろう。隣に座って止まった動画を再生すれば、にっこりとAが笑っている。

『ヒョンの考えてること当てようか』

「なに？」

『A…リラは大丈夫かな、無理しないかなとか』

「うん、半分当たり」

『もう半分は？』

「リラとデビュー出来るなんて、嬉しくてたまらない」

次の日、大きな会議室で、俺たちはデビューすると伝えられた。ここにいるみんなと、またリラと呼ばれることになる、Aと。

『Aは今日呼ばれていないんですか？』

「昨日同じことを伝えたから、今日は家に帰ってるよ」

「本当にAなんですか」

マークの声が静かな空間に響いて、ドンヒョクが目を丸くしてこっちを向いた。それはマークの声が少しだけ大きくて、少しだけ嬉しそうではなくて、真っ直ぐと前を向いていたから。Aはこのために帰ってきたんだよと言われて、俺たちは誰を信じたら良いんだろう。

『ジャニヒョン、』

「うん？」

『A、昨日泣いてて』

「うん」

『でも嬉しいって、泣いたけど嬉しいって言ってたんだよ』

「うん、そうだね」

『ヒョンは嬉しい？』

「嬉しいよ、これからは1番側にいられるからね」

練習の終わり、ヒョンの後ろを着いていく。インターホンを押した先にはAがいて、思わず手を広げて抱き締めた。わ、と声が聞こえたけど、ゆっくり背中に手がまわる。

「明日みんなに会いに行くの」

『じゃあ朝から一緒に行こう、ヒョンも良いよね？』

「手を繋いで行こうか」

「もうそんなに子供じゃないですよ」

今日は瞼は赤くなくて、にっこり笑った顔が綺麗だ。はじめて会った時のように、ずっと綺麗だ。