ネバーランド

-28- ページ32

湿った空気と雨の匂いが混ざりあって、梅雨と呼ぶに相応しい季節が到来したある日のこと。

少年が少女に問いかけた。

「アモール、そういや部活どこ入るの?」

「え、部活かぁ……うーん、リグオミは何部なの?」

「俺はバスケ。帰宅がよかったのに、バジェーノに無理矢理入れさせられた…」

「えー、帰宅って……無理矢理でも入って良かったじゃない」

「いやいや、本当に練習キツいんだよ」

「へぇ〜…バスケ部かぁ」

「前の学校では何部だったの?」

「美術部。だから、前のとこでは運動系に縁がなかったの」

「ふーん……あぁ、じゃあさ、今日の放課後"部活見学"に行かない?」

「部活見学?」

「うん。確か、今日は俺放課後練なかったはずだし」

そこで遠くから、誰かが口を挟んだ。

「いや、今日は放課後練あるぜ!」

「バジェーノ…嘘だろ」

「なんか臨時で入ったんだとよ」

「そんなの聞いてないよ!今日アモールと部活見学行くって約束しちゃって……だからお願い、休ませて!」

「え、部活見学?」

「そう。アモールがどこの部活入るかまだ決めてないらしくて……」

「ならバスケ部来いよ!」

そこで私は言葉を返した。

「え、でも…練習キツいんでしょ?」

「まぁ、しんどいけど……その分楽しいぜ!」

「楽しい、かぁ……えっと、他に誰が入ってる?」

「あー…っとなぁ……うちのクラスではロガルスとか」

「えっ、ロガルスもバスケ部なの?」

「ああ。アイツはめちゃくちゃ上手いぜ!毎年絶対レギュラーだもん。夏のインターハイも必ず出るし」

「へえ〜、すごいのね…意外」

感心していると、リグオミが口を開いた。

「とりあえず一回見学来たら?入るかどうかは、今日の練習見てもらってから決めるとして」

「それいいな」

「じゃあ、放課後一緒にグラウンドまで」

「おっけー!」

それからは放課後まで、いつもより時間が短く感じられた。

ー部活見学…楽しみだなぁ

そんなことを思いながら、授業中にペン回しをする今日この頃。



* * * * *



「これが、バスケ部……」

放課後、私はバスケ部の部活見学に来ていた。

「おい、こっち!」

「ボール回せ!」

広い体育館に、シューズが擦れる音とボールをつく音、そして少年たちの掛け声が木霊する。

ベンチに座ってその様子に感心していると、

「どう?気に入った?」

ワンプレー終わったのか、バジェーノが横に座ってきた。

「ええ…でも、私なんかにできるかしら……?体力無いし」

-29-→←-27-

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す