ネバーランド

-1-プロローグ ページ2

私は午後の美術室にいた。

鏡の絵を、描いていた。

でもその鏡は鏡なのに、私を映すことはない。

なぜかって、そんなのは分かりきっている。

ーこの鏡は"絵"だから。

当たり前のことなのに、なぜか私は悲しくなった。

ー鏡にさえ映らない私って何?

鏡は現実の景色を映し出す。けれど、そんな自然の法則にも私の存在が無視されている様な気がして。

ーここに、この世界になぜ私はいるの?

いたって意味がない。どうせクラスの人たちは私を避ける。いや…避けるじゃない。もうあの人たちの瞳に"私"は映っていないんだ。避けるじゃない、消したんだ、私を。

ーなんで私なんか生まれてきたの?

誰が得をした?私のせいでお父さんとお母さんは喧嘩をした。離婚した。さよならも言わないで。全部全部、私がいたからでしょう?私の存在は人を不幸にする。誰かを幸せになんかできやしないんだ。じゃあもし、私が消えたら……?



ー私がいない世界。



きっと、今まで私がカゲで見えなかったものが輝きはじめて、今まで輝いていたものがさらに輝きを増してくんだ。

そんな素晴らしい世界のために、私っていちゃいけないんだ。

ー私はカゲなんだから……

最近、気づいたの。


友達だよ


なんて嘘つきよりも


死ねばいいのに


なんて意地悪の方が

私の心を綺麗に飾るって。



ねぇ

未来(いま)の貴方(わたし)には聞こえますか。





そんな少女悲しげな絵に手を伸ばしたとき

少女は絵の中に吸い込まれてしまい、

誰もいなくなった美術室で、筆が落ちる音と窓から差し込む夕日の赤が混じって不協和音した。

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