秘蜜 (ページ12)

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美容師「久しぶりだねー」

「ほんとね」

今日は久しぶりに美容室に来ている

有難いことに

現場で髪を切ることが多いほど

多忙な日々を送っていた

「染めようかなって」

美容師「なんかあれ？企画？」

「あー、全然気分変えたくて」

美容師「じゃあ好きな色でいいんだ？」

「そうなんすよどうがいいかな？」

美容師「んー、冬だしね」

この辺とかオススメだよ、
とカラーチャートを広げてくれる

「いいね、この感じとか」

美容師「西島、髪質柔らかいから
この辺とかでもしっかり色出そうだしね」

俺のことを、客なのに

西島というこの美容師は

俺の同級生だ

北海道から上京してきた俺の数少ない地元の友達

中学まで一緒にカラオケとか行っていたこいつも

青山に店を出すカリスマ美容師になっていた

美容師「にしても、ほんと老けないよな」

「いやお前こそ」

美容師「俺は童顔なだけ」

「ははっ確かに」

美容師「恋人は？」

「出来てたら言うし」

美容師「だよなー、俺も全然だわ」

こいつは、俺なんかの数倍モテる

「そろそろ一人に決めろよ」

美容師「まだ結婚とか覚悟ないわー笑」

「それ、俺も笑」

けど

「どんなに忙しくても、そんな俺を
『幸せもの』って思ってくれる人いねーかな」

美容師「いないだろそんないい女」

「っはだよなー」

美容師「だいたい最後は
私と仕事どっちが大事なのパターンだろ」

「きついなー、それはもう」

そうだ、

あんな出来すぎた彼女は奇跡に近い

あれから数日経った今も

そんな彼女の事を思い出している自分がいた