永瀬くんは、ニセのプリンス様【1】 (ページ19)

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またその後ろからは他のサッカー部員の

話し声も聞こえてきて、顰め面だった彼の表情が

すぐにいつもの優しい表情に変わる。

あ「あ、ごめん。」

「どうぞ」と一言かけ、場所を譲ると

何も言わず隣に立ち、

額から帯のように広がり落ちる汗を水で流し始めた。

別に彼がお礼言う人なんてコレっぽっちも

思ってないけど、やっぱりお礼ないんかい。

「おっ、噂のカレカノが一緒じゃーん」

「有名カップル～ヒューヒュー！」

そこへ、私達を見てニヤニヤしながら

茶化してきた他のサッカー部員達。

それに対して永瀬くんはどういう対応するのか

気になって、チラッと視線を彼に向ける。

さぁ、なんて反応する？

廉「やめろよ～蓮見さんが困っとるやろ」

「よっ！お似合いカップル！」

「蓮見さんが彼女とか羨ましいぞっ」

「今日は一緒に帰んのか～？」

「もう知れ渡ってんだから

これからは堂々と一緒に帰れるな！」

「もうキスした！？」

廉「なんでお前らに言わなあかんねん」

ふぅん。

案外シンプルな返しなんだ。

もっとカーブのある返しをするのかと思ってたのに。

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廉「部活終わったら昇降口前で待っとって」

あ「えっ、あ、うんっ」

急に話を振られると思ってなくて

思わずたどたどしい返事をしてしまった。

「おいー廉ー、俺らに見せつけんなよ～」

「このリア充めっ！」

廉「ははっ。お前らもはよ彼女作ればええやん」

「お前とは違って俺達は作るのに苦労してんだよ」

…って、男子のやり取りを普通に聞いてるけど

私まだ部活動中だったんだ。

危ない危ない。

一瞬自分の立場を忘れてた。

あ「あの、私もう行くね。

みんなにドリンク渡してあげなきゃいけないから」

廉「おん。また後でな。」

愛想笑いを向けると愛想笑いで返ってきて、

他の部員の人達にも軽く会釈してから

体育館へ急ぎ足で戻った。

ケラケラ楽しそうに笑う彼の横顔は、

女子に向けてるような

ただ貼り付けた嘘の笑顔じゃなくて。

男友達と居る時の永瀬くんの笑顔は

本当に心から楽しそうに笑っているように感じた。

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