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[side by you]
「何かリクエストある?」
車の後部座席に乗り込むと、ケースからギターを出して
簡単に爪弾きながら、シートベルトを締める私に
チャニョルが聞いてきた。
『最初はオススメから試すって決めてんの』
CN「ふーん」
それなら夜だしスローな曲を、と弦を優しく弾く…
"I wanna talk tonight, Until the mornin' light〜♪"
『懐かしいね、久々にOASIS聞いたかも』
CN「お、知ってた?」
『洋楽は結構聞いてたんだ』
CN「BGMとしては合格?」
『フフ、演奏も歌声も一晩中聴いてたいくらいだよ』
CN「やった♪」
気ままに色んな曲を歌うチャニョルを乗せて
20分位車を走らせる。
泊まってるホテルの看板が見えてきたので
1ブロック手前で静かに車を停めると、
後ろを向いて"ん?"って顔したチャニョルに聞いた。
『家どこらへんなの?近くまで行くよ?』
CN「んー」
『まさか…』
CN「へへ♪ お望み通り一晩中聞かせてあげるよ」
『無理』
CN「A〜 ギター抱えて野宿になっちゃうよ〜」
『もうすぐ夏だし、平気でしょ』
座り直してバックミラー越しに睨む。
流石に、出会って数時間の男と夜を超すわけには…
CN「ここらへん、夜中に押し込み強盗増えててさ、
ホテルで女一人なんて真っ先に狙われんじゃない」
『!!!』
チャニョルのその言葉を聞いて思い出した恐怖…
CN「大丈夫?」
まだ旅の始まりだから、と不安と恐怖を雨のせいにして
強がってた自分がいたことを思い知らされる。
『昨日の夜、いきなりドア叩かれたの…
訪ねてくる人なんている訳ないし、間違いかと思って
スコープから外見たら知らない男が立ってて…』
CN「ホテルの従業員が客の情報流すこともあるって」
また来られたら…ドアを強引に破られたら…
CN「治安が良い街ではないしさ、俺に寝るとこくれたら
眠りにつくまで子守唄歌ってあげるよ」
『…そっちこそ不安じゃないの?
さっき会ったばかりの何してるかわからない女で』
CN「一杯のコーヒーに心からホッとした顔する女を
放って置くことできないし」
そう言ってまたニカッと笑ったチャニョル。
その笑顔には人を安心させる効果があるみたいで、
もうこれ以上抗うのは時間の無駄だと思った。
再び車を出すとホテルの駐車場に入っていく。
こんなことなら、セミダブルじゃなくて
ツインの部屋にしておけば良かった…。
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作者名:コナツ | 作成日時:2013年11月20日 1時