純愛じゃない【灰谷蘭】

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『君、ここ来るの初めて？』



『ん、かわいーね』



そうだ、あの夜確かこのバーでお酒を飲まされて完全に酔いまくった私を家まで送ってあげる。なんて言ってホテルに連れ去ったのもこの男だ。ホテルの扉を開けた瞬間後ろから顎を掴まれてキスされて襲われたのも覚えてる。



あの時の私は頭が回っていなかったがこの状況は流石にマズイと思って逃げようとした。
そんな私を安易に抱き寄せて服の下に手を伸ばした彼も覚えてる。





思い出した記憶と恥ずかしすぎる行為に頭を抱えた私を他所にやっと思い出した？と私の指を撫でる彼は心底愉快そうだった。




「今日も連れ去っちゃっていい？」




私の耳元でそう囁く彼は色気の塊だった。
彼の甘さに耐えられなかった私は胸板を押し返し慌てるようにそのバーを跡にした。あれ以上一緒に居るとまた彼のペースに呑まれてしまう。






「やばい、私顔真っ赤だ」






夜の六本木を歩きながらスマホに反射してる自分の顔を見て心臓の音が鳴り止まない私はきっと彼に翻弄されている。

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