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「…A、そこ間違えてる」



そう言ってAの打つパソコンを指さした九井は彼女の様子を横目で見てため息をつく。Aは頭の回転が早い上、教えたことをすぐに出来るよう吸収出来る力があった。事務作業も難無くこなしていたのだが、まるで機械のように黙々と画面に向き合う彼女の顔色を伺っては心配が募るばかりだった彼はAの肩に手を置く。



「…お前は一旦休め。ろくに寝てねえだろ」



そう言ってAの顔を覗き込むも「はい、聞いてみます」と言っては目を逸らす彼女に再びため息をつく。聞いてみるというのは竜胆の事なのだろうけれど、彼女は基本自分の考えで動こうとしない。ご主人様の命令が絶対らしく、アジトから脱走しようとする素振りも見えない彼女に少しだけ同情してしまう部分があった。彼女は色々、報われなさすぎていたから。


「お前なぁ、命令が無くても自分で…」



「よお、昨日は随分と楽しかったなぁ」



「…三途」


パソコンに向かって視線を向ける彼女の頭に銃を押し付けてそう囁く三途にAは何も反応しなかった。「あ?テメェ誰の許可取って無視してんだよ」三途は彼女の様子に心底苛ついている様子で、痛いくらいの力で銃を押し付けながら
「餓鬼が調子乗ってんじゃねえよ。殺すぞ」と言っては舌打ちを零す。


「ご主人様の命令ですので、お答えすることは出来ません」


「あぁ!?」


彼女がゆっくりと口から発した言葉に声を荒らげた三途はAの椅子を蹴飛ばして彼女を床に転ばせる。三途は身体の上に馬乗りになり、銃を喉に押し付けられたAは苦しそうに咳込み三途の胸板を軽く押す。



「テメェの脳髄、今ここで穿り出してやるよ」



そう言って彼女の頭に再び銃口を押し付けた三途を止めようと口を開く九井を他所に、「三途」という声がすぐ後ろから聞こえ、その場に居た全員が黙り込む。


「…首領」


「下がれ」


圧の強いその声調に怯んだ三途は「…うっす」と言って渋々Aの身体から離れる。うちの首領が誰かの殺しを止めたことは初めてで、単に彼女が仲間だからというのもあるのだろうけれど誰も触れてこなかった案件に彼は口を挟んだ。Aは恐怖で身体が動かない様子で、それを見た首領は「…灰谷連れてこい」と言ってその場から立ち去った。



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名無し97328号(プロフ) - 完結まで待ってます!無理せず頑張って下さい! (2022年1月13日 16時) (レス) @page25 id: 253b103d27 (このIDを非表示/違反報告)
ttakedasaki0906(プロフ) - 更新楽しみに待ってます!! (2021年12月23日 8時) (レス) id: 732dff87b6 (このIDを非表示/違反報告)
デルタ(プロフ) - 更新楽しみに待ってます!いつでも待ちます! (2021年11月4日 19時) (レス) @page23 id: e9d93af1ca (このIDを非表示/違反報告)
めんこい(プロフ) - 素敵な作品ですね(*^^*)楽しみに待ってます。 (2021年10月5日 2時) (レス) @page13 id: 43fbc056f5 (このIDを非表示/違反報告)
みりみりん - この後の展開が気になりすぎます!!更新楽しみにしてます!! (2021年9月11日 12時) (レス) id: 17b40665d7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:レモン | 作成日時:2021年9月10日 19時

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