ご主人様に募われたい。【灰谷竜胆】 (ページ5)

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「ここ、両手でしっかり握れよ。緩かったら腕ごと吹っ飛ばされっから」

「そんで親指をフレームに置いて…」Aに銃の使い方を教えて数分が経つ頃、意外にも飲み込みが早い彼女は怯えた目をしながらも両手でしっかりと銃を握り目の前に居る的に狙いを定める。

「…手、震えてる」

ふと彼女の震えた手を横目に見た俺はAの背後に回りそのまま彼女の手に自分の手を重ね合わせる。「頭狙え」そう言って彼女の手を強く握り、震えを抑えようとするも顔を後ろに向けてぎゅっと目を瞑る彼女を見てはため息を零す。

「顔背けんな狙えねえだろ」

「…はい」

そう言って目の前にある的の方に狙いを定め、ごくりと喉を鳴らした彼女は身体に力を入れ一気に銃を引き抜いた。部屋中に響き渡る銃声と、彼女の腕に伝わった反動に思わず手を離しかけたAを見た俺は咄嗟に腹に手を回しぐっと自分の方に引きつける。

「逃げんな、もう一回」

「っ、はい…」

腰が引けて自分の細い身体を支えるのもままならない彼女をちらりと見た俺はコイツにはまだ早かったかと頭を悩ませる。だが、今ここで使いものになるくらいまでに育てないと三途に殺されかねない。

揺れ動く瞳で俺を見つめる彼女を守ってやりたい気持ちは十分にあるが、ここで甘やかしてしまうと後々面倒な事になると思った俺は腹を括り彼女の手に指を滑らす。

「…終わったら好きなもん買ってやるから」

唯一の家族に逝かれて俺らに捕まっている彼女は初めて出会った時以来泣かなかった。元々積極的な性格ではないとは思ったのだが何より自分の事を話そうとしない為、彼女の事は全くと言っていいほど分からないことだらけだった。

比較的一緒に居る俺でさえまだまだ警戒されていて心を開いてくれやしない。教えろと言えば口を割るのだと考えたが彼女の事をあまり束縛したくなかった俺は自分から聞き出そうとはしなかった。まずは警戒心を解く事が大事だと思った俺はその震えた身体を支える腕に力を込める。

「だからいい子に出来るよな？」

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