第六十二話 アビス ページ17
がばりと、ベッドから飛び起きる。額につたる汗がうざったい。
なんやあ…、ともうひとつのベッドに寝るゾムがごろっと寝返りを打った。
『……夢。』
息を吐き出す。
手の甲を抓る。痛い。
大丈夫。大丈夫だ。私は、ここにいる。
『……。』
夢なら、もう少しいい夢を見せてくれよ。
日常国、明朝。
ゾムは相変わらず寝ており、その間にちゃっちゃと着替える。
情報収集は完璧だ。死亡した違法入国者達はE国の国民であることはほぼ確定で。そうなのだとしたらE国まで調べに行く必要があるが。
『ゾム、起きなさい。置いていくわよ。』
「んなぁ〜…もう少し待ってぇや…、あと…ご、ふん…。」
『私はもう準備できてるのだけど。まぁいいわ、そのまま何時間でも寝てなさい。私は先に行くから。』
ベッドから離れようとすると、掛け毛布からぬっと手が出てきて、私の腕を掴む。
そのまま布団の中へ引きずられていく。ちょっと、と言葉を漏らすも彼は聞く耳持たずで。
「ふふ、あったかいやろ？」『馬鹿言ってんじゃないの。』
足で毛布を蹴ると、あぁ〜とゾムが声を漏らした。
恨めしそうに歯を食いしばってこちらを睨む彼。痛くも痒くもないわと落ちた毛布を拾い畳むと、ゾムが上半身を起こし、
「ぉはよー、A。」
『……、はいはい。おはよう。』
遠慮もなく上着を脱ぎ出すので、嘆息し近くのドレッサーに座る。多少寝癖はあるが、綺麗な赤色だ。
近くのブラシを手に取り、髪を梳く。
「なぁなぁ、髪の毛結んでや！」
…はあ。視界に映らないようにしてたのに。
さっきのまま、上を脱いだ彼は後ろから鏡越しに自分と目を合わせる。華奢ではあるものの筋肉のついた彼の体は、至る所がボロボロで。
『ちゃんと服装を整えたら考えてあげるわ。』
「えっ！ほんま？恥ずかしいからこっち見んといてな…？」
誰が見るか、小僧が。
横髪を後ろまで持っていき、結ぶ。
鏡越しに、自分と目が合った。真っ黒な、アビスのような瞳。
『………。』
思わず、ため息をついた。
「そんなため息ついてたら幸せ逃げてまうで？」後ろでゾムがそう言う。
『誰のせいかしら。』
「誰のせいやろなあ。」
自覚なんて、あるくせに。
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五角形レンガ - すっげぇ、、、いや、感動でしかないです、凄すぎませんか！？ (8月12日 10時) (
レス) @page29 id: 142fcb5a32 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑 - 神作品、、、ッッッッ (2022年12月19日 12時) (レス) @page29 id: 9753754a57 (このIDを非表示/違反報告)
はしばみの揚げ物(プロフ) - 鴉さん» お！！そうですそうです！！！！いやあ知ってる人いた………！！！！！ (2022年10月19日 18時) (レス) @page14 id: f8654c08a0 (このIDを非表示/違反報告)
鴉 - 作者様！！！！59話の夢主さんが言っている小説ってメディウムですよね！！！！ (2022年10月19日 18時) (レス) @page14 id: cdf302c4aa (このIDを非表示/違反報告)
GuriGura(プロフ) - う‘‘ぁ‘‘ッ、、、、、、、、、さ‘‘い‘‘こ‘‘う‘‘ッ‘‘、、、、、、、、、 (2022年9月25日 8時) (レス) @page29 id: b9eb3e9d2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はしばみ | 作成日時：2022年9月8日 23時
