胃袋を掴んでしまった、という話。【rbr】 (ページ28)

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のんべえページ28

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笑顔をほころばせた鳥井さんは、ワクワクした顔でこちらを見つめている。
私はそれに苦笑いを返すしかなかった。

なぜ？それは…

「丸田さん全然食べとらんやーん！ほら、よそったるから！どんどん食べてな！」

『む、むが…』

どんどんとお皿に盛り付けられていくピーマンの肉詰め。鳥井さんは沢山食べる人だという情報を天乃さんから貰ったので、多めに作ったのだが、それが裏目に出た。死ぬ。

「ほい、ほい！」

『むぐ、と、鳥井さ、食べれな』

「え〜…食べれへんの？やったら俺が食べさせたるわな！」

まずい。人の家でゲロ吐くわけにいかない。くっそ、死ぬ。
元々そんなに胃が大きい訳でもないから、彼の行為は私への殺害予告ととってもいいだろう。なんなら今殺されかけてる。

「こるぁゾムぅ、まるたさんに無理させたんなやあ」

ぽかぽかと鳥井さんを叩く天乃さんは、既に呑まれた状態で。
助かる見込みがない。うむ、死のう。

＿

はた、と目を覚ます。時刻を見ると、夜の零時を過ぎていた。
電気は消えているが、気づいたことがあった。まだ、天乃さんの家にお邪魔していた。

近くからは、ぐうぐうと寝息が聞こえる。鳥井さんが、お酒が底に溜まったコップを片手に突っ伏して寝ている。

「…んあ…、」

隣に座っていた天乃さんが体を起こし、欠伸をする。こちらを見た目はとろりと垂れていて。酔いはまだ覚めて無さそうだなと、内心苦笑しながらおはようございますと言った。

「おあよ〜…まだ朝ちゃーやん…」

『そ、ですね、零時頃ですよ。すいません、長居しちゃって。』

「んあ〜、いいんですよお、むりいったん、おれですしぃ」

のびのびの語尾は聞き慣れているが、彼のはなんとなく嫌にならない。酔っ払いの相手は得意ではなかったが、この時間は嫌いじゃないと、そう思う。

『朝になったら、お暇させてもらいますね。』

「うぇ？うー、まるたさんに朝ごはん作ってほしいんやけど〜…」

その言葉に、どきりと心臓が掴まれたような気がした。
いや、いや。相手は酔っ払いだぞ。本心なのかもしれないが、いや。

『…天乃さんが、いいなら』

「ん、ふふ、天乃やなくてええよお、ろぼた、呂戊太がええ」

『ろぼ、たさん？』

天乃さん…基、呂戊太さんは満足そうに笑った。