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コートに身を包んで戻ってきたA。お先失礼しますとブルーノに頭を下げるのを見て、カクも立ち上がった。
「ここの所物騒じゃしのう…本社まで送る。」
「あ…全然いいんですよ？だって、皆さんまだ飲んでらっしゃるし…。」
ちらりとAが彼らを見る。＿＿素直に送られてけ。パウリーがグラス片手に彼女にそう言った。
「えと、じゃあお言葉に甘えて…。あ、でも。寄りたいところがあるので…いいですか？」
「ああ、構わんぞ。」
＿＿拭いたんじゃろうが、少し匂うな。ふんわりとブルーベリー香るAの隣をカクは歩き、店を出た。
空に、月の輪郭が映る。綺麗な三日月だった。
「それで…行きたいというのは、どこへ？」
「ええと…病院です。たしか、まだ面会時間は過ぎていないはずなので…。」
＿＿急いでブルを借りれば間に合いますかね。Aは頬を掻き笑った。ふと、カクの思考に影が落ちる。
以前、潜入時にもルッチに言われたことがあった。＿＿馴れ合うのは勝手だが、"仕事"はきっちりしろよと。
「…おお、そうか！ならわしに任せい。」
「え？っわぁ！」
Aの足に腕を通し、カクは持ち上げる。＿＿しっかりしがみついておくんじゃぞ。わははと楽しそうにカクは笑う。Aはカクの首に腕を回し、必死に落ちないように掴む。だっと走り出すと、風を感じた。
＿＿もしかしたら明日には、全て壊れているかもしれない。この幸せも、笑顔も、全て。
「わはは！夜風が気持ちいのう！」
ダン、と屋根を蹴って宙を舞う。高いところは苦手ではなかろうかとAの顔を見るも、楽しそうに笑みを浮かべていて。
「あははっ、本当早い！」
「楽しそうでよかったわい！」
＿＿もし、わしらがCP9でなかったのなら。もし、彼女が目的の対象じゃなかったのなら。
この両手が、血濡れていなかったのなら。彼女とは、いい関係を築けたのだろうか。
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作者名：はしばみ | 作成日時：2022年11月11日 0時
