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「…ここで？Aがか。」
普段はいつも、表情が硬いブルーノの酒場の店主＿＿ブルーノは、目の前で仁王立ちする少女にそう問うていた。
「はい。…その、皆さんには色々ご迷惑をおかけしましたし、私なりに出来ることを探したいので。」
Aの言い分は、酒場で働かせてくれないかということ。勿論、店主としては可愛い少女が来れば客足も良くなるしその分金は入ってくる。だがあくまで彼も"任務"というものがあった。しかもその対象となる人物がいて、自分達が落ち着いて話が出来るわけもないし。どうしたものかとブルーノは頭を抱えた。
＿＿まぁ正直彼女の言い分は筋が通ってる。それを断るのも心苦しいな…。
「あァ、まぁ…いいだろう。人手が増えて嬉しいしな。」
「…！！あ、ありがとうございます！！精一杯、働かせてもらいます！」
「へへへ…、まぁ、勿論無理は禁物でな。」
ふんす、と意気込んだ彼女をみて、ルッチ達にどう言い訳しようかとブルーノは考えていた。
「それとだ、働くことはいいことだが…あんまりこき使うとな、カクがうるさい。」
「…？カクさんが？」
まだ開店していない酒場は、がらんとしていて。カウンターには、Aとブルーノ。
「まだ昨日の犯人が捕まった訳じゃあねぇ…。いつかはAだって危険だ。仕事は定時に上がれ、いいな。」
「あ…はい、ありがとうございます、お気遣い。」
いや、これぐらい当たり前だとブルーノは柔く笑いながら首を振る。
＿＿にしても、どうして突然働きたいだなんて思ったんだ。何気なくブルーノは聞くと、Aは少し顔に影を落として、グラスを握りしめた。オレンジジュースに溶けた氷がからんと鳴る。
「…皆さんに、良くしてもらいすぎなんです。甘やかされてばっかりも、皆さんに悪いですし…。」
「…あー、あれはまぁ。なんだ…過保護というか、妹分を可愛がりてェだけなんじゃないか？」
「妹…ですか。私には兄弟がいなかったので、なんだか変な気持ちですね。お兄ちゃんか…。」
1度持ってみたら分かるもんだぜ、自分より小さい生き物を見ると。ブルーノがそう笑うと、そうなんですね、とAは笑った。
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作者名：はしばみ | 作成日時：2022年11月11日 0時
