落ちた鬼灯。【OP】 (ページ13)

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２落としたカトラリー。ページ13

Aとカクは、帰路を辿っていた。既に先にぶっ潰れたパウリーはルッチが担いで帰らせ、その後を追うようにAもカクに連れられ、千鳥足ながらに彼の背中を追った。

「あのお酒はおいしかったですねぇ、また機会があれば飲みにいきましょう？」

「そうじゃな。だが限度があるぞ。飲み方を教えんかったわしらにも非はあるが…。」

「えへへ。今回は楽しかったので、全然大丈夫ですよお。パウリーさんのほうが、ぜんぜん飲んでらっしゃったじゃないですか。」

間延びした声も、彼女の声だと思うと変に不快にならない。転びそうになった体を掴み、肩を組むカク。すいませえんと、へらりとAは笑った。

「明日はしんどくならんように、水を飲んどくんじゃぞ。」

「はあい、忘れないように……あれえ。」

図書館の裏手にある扉から入れば、Aの家であったが…その窓から、光が漏れている。ああっとAが察したかのように声を上げた。

「先生、帰ってきたんですよ、きっと。なあんだ、連絡ぐらい入れてくれればいいのに…。」

「そうか。まぁ…中まで送るぞ。」

「ありがとうございますう。」

先生というのはこの図書館Calmの司書、カームという男に付けられた肩書きだ。1年前からAにこの場所を託し、忽然と姿を消したものの、突然家へと帰ってきた様子で。

がちゃりと、Aがドアノブを捻る。ただいま帰りましたと言う声は、徐々にかすれて消えていった。

「＿＿先生？」

「な…」

テーブルには割れた花瓶。以前カクに贈られた花を生けていた花瓶が、粉々に割れている。その奥には、＿＿赤色の花と共に、無精髭の男が倒れていた。

「…しっかりするんじゃ、おい！」

「＿あ、せ、せんせ…」

ごろんとうつ伏せになっている男を、カクは起き上がらせると＿＿確かに男の腹から、血が。無数に空いている穴が、無惨で。

「ひっ…」

微かに、Aが喉を鳴らした。

「せ、んせい…先生！」

Aが男の肩を揺らす。白いシャツに、じっとりと血が滲んでいるのを見て、うっと彼女はえずいた。
＿＿なんで、どうしてこんなことに。Aは身を震わせた。