7-1 side:K ページ25
7-1 side:K
それから、部屋に戻ってきた藤ヶ谷に中に注がれたものを処理してもらったり、全身を拭ってもらったり――最後は用意されていたパジャマに着替えさせられて、藤ヶ谷の腕の中で眠りについた。腕の中はとても温かくて、余計に自分の心に混乱をきたしてしまう。本当は人の心をこうして弄ぶ藤ヶ谷に怒りたかったのかもしれない。だけど、そんな藤ヶ谷に今、俺の心が奪われているのも事実だ――
「・・・んっ・・・」
目を覚ますと、やっぱり隣に藤ヶ谷はいなくて――俺は微かな温もりを求めて、藤ヶ谷が眠っていただろう場所に倒れこみ、シーツに頬を擦り寄せてみる。だけど、よく分からなくて、俺は薄っすらと涙を浮かべてしまった。すると、不意に俺の頬に触れ、目尻から零れそうな雫を払ってくれる指先――俺はびっくりして顔を上げてしまった。
「おはよう、北山」
「・・・っ、藤ヶ谷・・・！？」
「そろそろ起きる頃かと思って」
いつの間にかベッドに腰をかけて俺を見つめている藤ヶ谷の微笑みと、上半身に何も衣服を纏っていない姿に、俺は身体を繋げたことを思い出して気恥ずかしくなり、布団に隠れるようにして包まった。
「おや、まだ眠いのかな？」
「・・・むー・・・」
分かってるくせに、と俺は布団の中で頬を膨らませて抗議する。
「俺、そろそろ大学行かないといけなくて・・・できれば顔が見たいんだけど」
そう言われてしまうと、急に寂しさが沸きあがってしまい、俺はひょこっと顔を毛布から出した。目に映るのは、藤ヶ谷の綺麗な背中――けれど、良く見ると絆創膏が貼られており、俺はガバッと跳ね起きた。
「藤ヶ谷・・・その傷、もしかして俺が・・・」
「んっ？大したことないよ」
快楽に溺れながら、俺は藤ヶ谷の背中に爪を立ててしまったのだろう。俺は思わず藤ヶ谷の背中に触れ、頬を寄せてしまう。スッと藤ヶ谷の背中が離れ、俺は前のめりに倒れそうになると――正面を向いた藤ヶ谷の腕の中に抱き込まれ、唇がそっと重ねられた。藤ヶ谷の腕の中はやっぱり温かくて――俺は心からこの温もりを欲しているのだと、自分の気持ちを自覚した。
――藤ヶ谷に、愛して欲しい。
「今日は一日横になっていたほうがいいと思う」
「・・・うん・・・」
藤ヶ谷に促されるまま、もう一度ベッドに横たわると、俺は頭を撫でられて、そのまま眠りについた。
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作者名：ほわわ
| 作成日時：2019年7月25日 1時
