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***
「・・・あ、やっと電話に出た！ねぇ、どういうこと！？」
何が？じゃなくて、とトイレの個室で千賀は携帯電話の相手に焦ったような声を上げている。
「ミツは何者？だって、玉を誘惑するのは俺の仕事じゃなかったのかよ！え？」
周りには誰もいないから大丈夫・・・、と電話先の相手の声を聞くたびに落ち着きを取り戻しているようだった。
「うん・・・分かった。とりあえずニカと宮田とは上手いこと付き合うから」
でもお金はちゃんと払ってよ、と千賀は狭い個室の中をクルクル歩き回る。
「え？だってさ、俺、化粧水は11本も使ってるんだよ！あとは・・・全身脱毛とかしたいし・・・って、今、笑ったでしょ！？ちょっと、うん、そうだけど・・・！」
千賀はトイレの扉に腕とおでこをつけた。すると、反対側から叩かれる衝撃にびっくりしたようにして身体を仰け反らせる。
「おい！千賀、長くないか！？」
具合悪いの？と二階堂が扉を叩きながら声をかけている。
「やば・・・じゃあ、また後でね、お姉ちゃん！」
電話を切ると、千賀は慌てて個室の中から飛び出した。
「ご、ごめーん、ニカ」
「いや？体調悪いとかじゃなきゃいいよ・・・心配した」
「・・・ふぇーん、嬉しい！ありがと！」
千賀は顔を真っ赤に染めて、二階堂にそっと腕を絡ませる。手を洗ってないだろ、と困った顔をして離れようとする二階堂に、千賀は少しムスッとした顔をする。
「電話してただけだもん！」
「ああ、お姉ちゃん・・・ってやつか。千賀、お前、お姉ちゃんいたんだ？」
うん、と千賀は小さく頷き、二階堂を見上げる。
「・・・とびきりいい香りのする美人なお姉ちゃんが」
「そんなに美人なら、今度紹介してよ」
「ん、もう！ニカ、妬くわー！さっきのおミツのこともそうだけど・・・！」
「ハハハ、可愛いな、千賀は・・・って、俺も電話かかってきたわ」
先にダンスホール行ってて、と二階堂は電話を耳に宛がいながら、千賀に手で先に行くように合図を送る。
「すぐ来てね！」
千賀の背中が見えなくなるのを確認して、二階堂は今度は自分がトイレの個室の中に入る。
「お待たせ・・・どうしたの？」
また何か美味しい話？と二階堂は唇を静かに歪ませた。
***
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作者名：ほわわ
| 作成日時：2019年5月7日 0時
