5-17 side:K ページ46
5-17 side:K
「・・・名残は惜しいけど、仕事の連絡しないといけないから・・・車で送らせるよ」
「・・・ありがと、玉」
「無理矢理連れてきてごめんね」
「ううん・・・俺が黙って帰っちゃったから・・・」
そっと玉の指先が頬に触れ、優しく撫でられる。そっと顔が近づき、柔らかい唇が重なり合う。玉に引き寄せられ、促され連れられるまま部屋の扉の前に立った。玉が扉を開くと、黒服の男性が見張るかのように立っていたことに気がつく。そして、そわそわと心配そうにこちらの様子を窺う宮田の姿も――
「ミツを家まで送ってあげて」
「かしこまりました、裕太様」
「・・・宮田も、ミツをちゃんと送ってあげて」
俺が連れてこさせたんだけど、と苦笑いを浮かべ俺の頭を撫でる玉の姿に、宮田は少しだけホッとした顔をしている。
「玉、電話しなきゃでしょ？ここで大丈夫だよ」
「ミツ」
グッと引き寄せられ、俺は玉の腕に抱き締められる。玉が俺の耳たぶにそっと唇を寄せた――
「次は・・・もっとミツを実感させて欲しい」
「・・う、うん・・・」
「じゃあ、またね・・・宮田」
「オッケー！じゃあキタミツ、こちらへ」
俺は今度宮田に手招かれるまま足を進めていく。途中で振り向くと、玉はまだ扉の前に立って俺を見送ってくれているようだった。その視線から、本当に優しく、真摯に俺に愛情を向けてくれていることを感じて胸が苦しくなる。俺は、本当に玉に対して残酷なことをしているのではないだろうか――
「キタミツ、さっきはごめん」
その言葉に顔を正面に戻すと、宮田が泣きそうな顔でこちらを見つめている。さっきの会話のやり取りからも、玉と宮田には何か特別な絆のようなものを感じ取れた。玉に怒られて宮田もきっとショックだったのではないだろうか。
「え、ああ、気にしないでくれ・・・どっちかと言えばあの二人の悪ノリっぽかったし」
「・・・玉の言う通り、キタミツは天使みたいだね」
本当にありがとう、と真っ直ぐに御礼を言われて何だかくすぐったくなってしまう。そして、外に出るとそこにはまた黒塗りの高級車が――乗り込んで俺は少しだけ悩み、横尾さんの事務所から少し離れた公園を指定した。横尾さんの事務所の位置を知られるわけにはいかないのだから。
「えっ、キタミツ、公園に住んでんの！？」
「・・・んなわけねーだろ！」
宮田の訳の分からないボケに少し困りながらも癒されて――俺は本来の目的地に向かうことになった。
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作者名：ほわわ
| 作成日時：2019年5月7日 0時
