5-3 side:K ページ32
5-3 side:K
「宮田様、お待ちしておりました」
「にゃーっす！あざまーす！」
ほら降りるよ、と再度宮田に肩を引き寄せられ、大した抵抗もできないまま、俺は開かれた扉の外に出る。昨日とは違う、裏の駐車場からそのままお店の中へ入れるようだった。止まった車を開けたのは、昨日入口で身分確認をしていた男だった。サングラスの下では俺を冷ややかな目で見ているに違いない――先ほどから身震いが止まらないからだ。宮田に促され、今度はその男が背後から俺の両肩を掴み無理矢理歩かせる。薄暗い廊下を連れられるままに足を進めていくと、大きな扉があり、そこはIDカードがないと中に入れないようだ。一歩前に出た宮田がカードをかざすと、瞬時に扉が開かれる。足を踏み入れた瞬間に電気が一斉につくと、急に世界が変わったかのように豪華絢爛な廊下が目の前に伸びている。目を大きく見開いて、言葉なく(猿轡のせいでどっちにしろ喋れないんだけど)その光景を見つめている俺に、宮田が得意気に話しかけてくる。
「どう？気に入ったかい、お姫様」
俺は姫じゃない、と伝えたくて、大きく首を振って否定して見せると、素直じゃないところも可愛いなぁ、と宮田の口元に笑みが浮かび、頬を何度もツンツンと突かれ、俺は困惑してしまう。こんなに俺は嫌がっているのに何でこんなに嬉しそうなんだ――いい人の見かけに騙されてしまった自分を恨む。
「そういえばVIPルームって誰もいないよね？」
「・・・はい・・・多分、その・・・」
「えっ、多分って何？」
「いや、あの・・・」
どうやらまた凄い装飾のついた扉が見えてきて、宮田の口から何度か出ている“VIPルーム”にどうやら連れてこられてしまったらしい。けれど、サングラスの男が急にしどろもどろになり、宮田が怪訝な顔でこちらを――俺の背後にいる男に視線を送っている。
「あのさ、俺ならさておき、これ玉の命令だからね」
どうなってもしらないよ、と困った顔をする宮田に、男はようやく真実を語る気になったのか大きくため息を吐いた。
「申し訳ございません・・・実は千賀様が」
「えっ、千ちゃん、来てるの？」
千ちゃんだけ？と質問を畳みかける宮田に、男は首を横に振っているようだった。
「まぁ、もう、入れば分かるか・・・とりあえずお疲れ様」
男から引き離すかのように俺をグッと自分の腕の中に抱き締めると、宮田は勢いよくドアを開いた。
「おーい、千ちゃんー！」
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作者名：ほわわ
| 作成日時：2019年5月7日 0時
