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「・・・ここか」
薄暗いバーの入口の前に立ち、俺は緊張で高鳴る鼓動を抑えようと大きく深呼吸をした。青の着慣れない借りたジャケットの裾を正して、もう一度大きく息を吐く。階段をコツコツという靴音を立てて下りていくと金属できた扉が目に入る。入口の前まで来ると、分かりやすく警備をしていると思わしき黒服にサングラスをつけた大柄の男が二人――
「・・・ここは子供の来るところでは」
「・・・ん」
そう来るだろうと思って俺は用意していた運転免許証を、良く見ろ、とでも言わんばかりに男の眼前に差し出した。童顔だの幼いだの小さいだの言われるが、俺はれっきとした20代なのだから。何度か免許証と俺の顔を見比べて、黒服の男は納得したように扉を開いた。
「・・・失礼いたしました。どうぞお入りください」
「ども」
開かれた扉の先にはまた階段――店内に入ってもまだ少し薄暗くて、俺は片手を壁につけながら恐る恐る降りていく。健全なクラブだって聞いていたけれど、だんだん怖くなってくる。降りた瞬間に爆音でかかるEDM音と、降り注ぐミラーボールとレーザーのような光――音に合わせて踊りだす若者たち(俺も若いけど)はとても楽しそうだ。ちょうど曲の切り替わるタイミングだったらしい。
「うわ、綺麗な男の子・・・」
ダンスフロアで一際輝いている青年に目を奪われる。高身長で黒髪、色白で顔立ちの整った――いわゆるイケメン。白のTシャツにサスペンダーの付いたワイドパンツを身に纏う姿は――いわゆるオシャレ。クラブの中では一際シンプルなその格好が、誰よりも人目を惹いている。仲間と思われる人と微笑んでいるときの表情は童顔の自分とはまた違う意味で幼く少年のように見えてしまう。優等生っぽいのにこんな店で踊っていること自体ちょっと違和感を感じてしまうけれど。周りにいる男女問わず羨望の眼差しで彼を見つめているかのようだった。
「おっと、仕事で来てるんだった」
予定のバーカウンターに向かわないと、と俺は女の店員さんに声をかける。用意されたウィスキーのロックを手に一口だけ口に含む。何かを食べてからくれば良かったかもしれない、と空きっ腹に流れていくアルコールを感じながら大きなため息を吐いた。
『大丈夫、そこにいればきちんと仕事の相棒が来るから』
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作者名:ほわわ | 作成日時:2019年5月7日 0時