動き出す、作戦本部長31 ページ1
動き出す、作戦本部長31
「な、何！？」
驚く裕太とみっちゃんを後目に、俺達はポーズをササッと決める。太輔が大きく一息ついた。
「奪おうとしたんじゃない・・・取り間違えただけだ！！」
「ユー、ガット、コネクショーン・・・！」
「「えっ？」」
ロッカーの方に向かう太輔を見届けて俺はスーッと息を吸い込んだ。
「アケテミタックナ〜イ、アケテミタックナ〜イ(ファルセット)」
俺の歌声に合わせて太輔は何度もロッカーを開いたり閉じたりして見せる。
「夢中になって練習してたらロッカーを開け間違えたんだ！本当に間違えたんだ！！」
凄い剣幕で詰め寄ってくる太輔の迫力に、一瞬顔を見合わせる裕太とみっちゃん。そう、サングラスの鍔をクイッとあげたときは最終手段・・・“コネクションに絡めて、とりあえず勢いと剣幕で押し切る”だ。俺達も太輔のように、裕太とみっちゃんに詰め寄る。怖い怖い、とみっちゃんが裕太の腕に抱きついている。
「ちょっとガヤ！分かったから、そんなに詰め寄らないでよ！！」
「理解してくれたか、北山・・・ユニット曲の練習に夢中になってしまって・・・ついうっかり他意なく取り間違えてしまったんだ」
「へ、へぇー・・・ならしょうがない・・・のかな」
本当に熱心だね、と苦笑いを浮かべるみっちゃんと対照的に、本当かな・・・、と未だに疑いが払拭されていない曇った顔をする裕太。
「って、だからニカは関係なくない！？」
誰も視線を合わせようとしないことに大きくため息を吐き諦めたような表情をした裕太は、ん、と太輔に手を伸ばし、太輔はしぶしぶ、裕太の脱いだセーターと自分の持っている“北山プレミアムセーター”を、試合を終えたサッカー選手のように交換した。
「うわ、ガヤが着たからかセーター凄くいい匂いする」
「・・・玉ちゃん・・・」
クンクンと匂いを嗅ぎながら袖を通し、セーターをスポッとかぶった瞬間に、みっちゃんの瞳が切なげに曇る。そして、そんなみっちゃんとまるでシンメであるように、もう一人寂しさを湛えたような視線をセーターに送る太輔――
「俺の“北山プレミアムセーター”・・・！」
「太輔・・・ほら、元気出して」
ガクッと肩を落とす太輔を背中からギュッとハグをしてしまった。俺達の挑んだ最初の作戦は失敗に終わってしまった。太輔に後で怒られそう・・・と思っていたのだけれど――
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作者名：ほわわ
| 作成日時：2019年4月7日 19時
