カップル玉北編 22 side:K ページ22
22 side:K
「た、玉、何で玉まで泣いてるの！？」
「・・・っ、ひっく・・・」
もはや収集がつかない、とでも言わんばかりに宮田が困惑の表情を浮かべている。兄組に連絡しなきゃ、と携帯電話を取り出して誰かに連絡をしているようだった。俺も込み上げる涙を必死に堪えようとするが、自分の身体ではない所以か、涙の止め方が分からない。
「・・・(玉ちゃんに会いたい・・・！)」
両手で顔を覆い自分の涙をひたすら受け止める。いつも優しく自分に触れて愛を伝えてくれる玉の手に、むしろ込み上げてくる感情が抑えきれなくなっていく。仕事中なのに、みんな見ているのに、むしろ撮影中でさっきまで千賀を慰めていたはずなのに――
「・・・って言うくらい、傷つくと思います！！」
はいっ、と大きく手を挙げて、にっこりと微笑む千賀が記者さんに突進する。振り向いた千賀はめいっぱいの笑顔で、先ほどまで泣いていた様子を微塵も外に出していない。ありがと玉、と唇が動く。
「もうさすが玉、演技派だよね〜」
その言葉にハッとして俺は慌てて乱暴に涙を拭うと、引き攣らせながらも口元にゆっくり笑みを浮かべた。
「・・・大切な人に浮気をされたら・・・俺は、泣くくらい傷つくと思います」
「さすが玉！演技だったんだ！良かった〜〜」
宮田がホッとしたような顔で俺に抱きついてくる。その顔が本当に心配していたことを物語っていて、玉ちゃんの身体に抱きつくなんて！と怒る気も失せてしまいむしろ頭をもたげて宮田のハグに応える。
「そ、そうですか、分かりました。では取材の方はいったんこれで・・・」
「ありがとうございましたー！！」
戸惑いながら記者さんが他のスタッフさんの方へ向かう後ろ姿を安心した笑顔で二階堂が大声で見送る。いったん取材が終わった、と全員が同時に安堵のため息を吐いた。
「いや、ほんと玉が水を噴き出したあたりからびっくりした」
「ちょっとねー本当に何がどうなっているのかと・・・」
「ごめん・・・ちょっと今日いろいろあって・・・」
「・・・キタミツと何かあったの？」
実は中身が・・・と思わず口にしかけて、俺は口を噤んだ。本当に昨日玉と喧嘩して、気がついたら入れ替わっていて――もしかしたらもう戻れないかもしれなくて。玉との関係が今後どうなっていってしまうのかと思うと気が気じゃない。
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作者名：ほわわ
| 作成日時：2018年1月15日 0時
