きっと、何度でも【岩谷翔吾】 (ページ6)

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一目見てページ6

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翔吾side

────────2011年4月

彼女との出会いは、約8年前

先生「香取ー、隣だからよろしくな」

『はい』

親の転勤で、中3っていう変な時期に新しい学校へ転校

だけど、別に気にしてなかった
新しい環境で上手くやっていく自信がないわけじゃないし
緊張は人並みにするけど、人見知りは小さい頃からしないタイプで

『岩谷(いわや)くん、って言うんだね』

翔吾「うん…あ、岩谷(いわたに)だと思った？」

『いや、そんなこと…うーん、ちょっとあるかな』

翔吾「ふはっ正直やな？」

『なんか、ごめん』

翔吾「ううん、よく間違えられるから」

最初の会話にしては、変な会話だった気がする。

まだ名前も知らないけど、
転校初日、俺の隣の席に座っていた彼女の第一印象は“優しそうな女の子”。

顔立ちは割とハッキリしてて美人な印象が強いけど、話し方とか雰囲気からは気の強いタイプではなくて、きっと優しい子なんだろうと直感でそう感じた。

『岩谷(いわや)くん…覚えました！私、香取Aって言います』

翔吾「香取さんね」

『うん、よろしく』

翔吾「こちらこそ、よろしく」

中学3年、4月。
東京の学校、着慣れない制服と見慣れない教室に歯がゆさはあったけど

最初にリラックスできたのは、間違いなく彼女のおかげだった。

転校生っていう物珍しさもあっただろうし、気を遣ってくれてたんだと思うけど
俺が隣に座った時からずっと、どんな話もニコニコ笑って聞いてくれて

“優しそう”っていう第一印象に、“女のコらしくて可愛い子”がプラスされた。

『あのさ、岩谷くんって言ったけど、翔吾くんって呼んでもいい？』

翔吾「あー…確かにそっちの方が間違われる確率低いな」

『…ごめん、』

翔吾「うそうそ、嘘やで？全然翔吾って呼んで」

『いいの？』

翔吾「逆にダメなん？」

『ううん、ダメじゃない…！ありがとう』

翔吾って呼んでって言っただけなのに、彼女は本当に嬉しそうに笑った。
大袈裟やなって思いながら、俺も嬉しくなった。

漫画の中だけの世界やって思われるかもしれへんけど

その笑顔を見た瞬間、無意識に自分の心が動いた。
それを確実に感じた。

出会ったばかり人にこんな気持ちになること、そんな感覚は今までなかったけど

一目見て惚れるっていうことが本当に存在することを知った瞬間だった。