きっと、何度でも【岩谷翔吾】 (ページ16)

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優しい気持ちページ16

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翔吾side

─────────2012年3月

中学校、卒業。
この学校にいたのは、たったの1年間だけだったけど

Aという大切な女の子と出会えた
もう迷わない、真っ直ぐ追いかける夢もできた

『翔吾くん、』

翔吾「ん？」

『卒業おめでとう』

翔吾「あれ？送り出されるの俺だけ？」

『あ…じゃあ、お互いおめでとう！』

翔吾「…てか、むしろAの方がおめでとうやん」

どっちがおめでとうとか
当たり前だけど、そんなのはない
ちゃんと2人共、胸ポケットのところに卒業生の証がついている

むしろAの方が…と、俺が言ったのは
ついこの間発表された、Aが第1志望の高校に無事合格したから

翔吾「合格おめでとう！」

『もうそれ3回目だよ』

翔吾「あれ、そうだっけ？」

卒業式終わり、皆が校舎の前で写真を撮りあっている。

この校舎にお世話になった期間は短かったけど、思い入れはびっくりするほど大きい。

『あの！翔吾くんにちょっと渡したいものがあります』

翔吾「えっなに？」

『あ、期待はしないでね。本当にしないで？』

Aは念を押しながら、背負っていた鞄を開けて、それを取りだした。

『これ、』

翔吾「え…マジ？」

『うん、』

翔吾「読んでいい？」

『いや、ダメだよ。家帰ってから』

渡されたのは、薄い水色のシンプルな封筒に包まれた手紙だった。
中身は見るなと言われたけど、見てもないのに泣きそうになって

『あ、でもこれだけは言う』

翔吾「ん？」

『これから、いっぱい遊ぼうね』

最初に宣言するもんだから、何言われるか身構えたけど
内容もだし、その時のAの笑顔がめちゃくちゃ可愛かった。

『受験終わったら、いっぱい翔吾くんと遊ぶって決めてたもん』

翔吾「そっか…うん、いっぱい遊ぼな？」

俺がそう言う頃には何しようかな～って、あっという間にもう自分の世界の中
そのやりとりだけで、俺は自然と優しい気持ちになれた。

翔吾「でも卒業って、ほんまに一瞬やったな…離れ離れか」

『あ！翔吾くん、そんなこと言ってられないよ？これからいっぱい遊ぶんだから』

そう言う彼女は頼もしくて、俺よりよっぽど強い、“すごい”人間だったと思う

高校離れるって考えると、俺は内心すごい嫌だったし、寂しかった
今までのことを思い出すと、泣きそうにもなった

Aの存在があったから、前を向けたことがいくつもあったから。