きっと、何度でも【岩谷翔吾】 (ページ13)

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ヒーローページ13

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翔吾side

────────2011年9月

“進路”

その言葉を聞く度に、胸のどこかに突っかかりを覚えていた。
でもこれは、Aと出会うずっと前から頭の片隅にあること。

俺は、このままでいいんだろうか

その迷いはずっと心の中にあって、ずっと天秤にかけられてるみたいな状態で

親がそんな中途半端な俺の気持ちを察して、気を遣っていたなんてこの時は思いもしないで
大学まで進学しなさいという言葉に、反抗的になっていた。

将来を決めきれない俺にとっては、周りの存在に焦っていくばかりで

親より周りの存在より、何よりも
この夢を叶えるために生きていくと覚悟を決めきれない自分が1番嫌だったことに気づけずにいた

そんなどうしようもない時に、俺は初めてAに弱い自分を見せた。
めちゃくちゃな気持ちを全部、Aに吐いたことがある。

『私には、翔吾くんみたいな夢も行動力もないけど…翔吾くんがしたいことを私は応援したいと思ってる』

翔吾「うん、」

『それは前提にあって、それで…ごめん、言葉選ばずに言ってもいい？』

翔吾「うん、いいよ」

『…正直、聞いた時にね、諦めちゃうのかぁって思っちゃった』

“私からしたら本当に素敵な夢だなって思う”

“楽しそうに踊る翔吾くん見ると笑顔になれるし”

“人前で踊った後に、俺はやっぱりダンスがしたいって言った時の翔吾くんの顔とか…そういうのを思い返してみても、やっぱり私はそう思うよ”

Aの言葉は、全部スっと入ってきた

『翔吾くんの強い気持ちを見せたら、きっとお父さんお母さんにも分かってもらえると思う』

こんなこと聞かされると思ってなかったんだろう
それでも、俺の気持ちを分かろうとしてくれて

きっと俺以上に、悔しそうな悲しそうな顔をしてた。
こんな顔にさせてるのは他の誰でもない俺で

色んな感情で、頬を伝っていく雫が止まらなかった。

それをもう見られてるのに、見られたくないという本能が何故かまだ働いて
Aを抱きしめると、同じ力で抱きしめ返してくれた。

『翔吾くん』

翔吾「ん、？」

『辛くても、笑ってたらきっといいことある気がする』

翔吾「…ん」

『だから、一緒に頑張ろうね』

その言葉に、辛いのは俺だけじゃないと
そう思えた

時にAは、俺のヒーローにもなってくれたよね。

“何があっても絶対に夢を叶えたい”

そう思わせてくれたのも、Aだったから。