夢見る隙間（壱×北） (ページ15)

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長すぎる夢ページ15

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吉野さんの傘に入れてもらって
家に着くまでの10分。

申し訳ない、申し訳ない…
吉野さんにも、吉野さんのファンの方にも
そんな気持ちでいっぱいだった。

北人「次からはちゃんと、傘持ち歩くんだよ」

『…はい、』

吉野さんと知り合いくらいの程度になってから、
普通にお話できるようになったのは

吉野さんが私を下の名前で、
Aちゃんと呼ぶようになって、
敬語をとってくれたことがすごく大きいような気がする。

ご近所さんとか友だちとか、人付き合いが本当に少ないから
少し距離が近くなったような気がして嬉しかった。

…距離近づけちゃいけない人なのに

北人「着いたね」

『本当に、迷惑かけてすみませんでした…』

北人「俺は全然大丈夫だよ」

『…吉野さん、ありがとうございます』

なんて、優しい人なんだろう。

顔もかっこよくて、歌も上手で、たっくさんファンの人がいて
その上に、優しいなんて…

神様、たくさんたくさん授けすぎだよ

北人「…いつになったら、下の名前で呼んでくれるの？」

『…え？』

北人「…あー、風邪引いちゃうから後でいいや」

『え、後…？』

北人「…はい」

吉野さんが完璧すぎることに感心して、ぼーっとしていた私に
吉野さんは自分のスマホを私の前に突き出してきた。

『え…何ですか？』

北人「連絡先…交換しませんか」

『……へ？』

え、え、今なんとおっしゃいました？
連絡先？交換？
誰と？

北人「大丈夫、変なこと何も考えてないよ」

『いや…それは分かってます、けど…』

北人「……いや？」

いや？って…
そんな女の子みたいな、
女の子よりかわいく首傾げられても…

私の連絡先持ってて、吉野さんの何になるんでしょうか。

『…分かりました』

北人「ほんとに！ありがとう」

ありがとうって
あの…こっちのセリフです。

北人「ごめん！結局時間とっちゃった。暖かくして、寝てね」

『はい…本当にありがとうございました』

北人「うん、じゃあおやすみなさい」

そう言って、自分のマンションに向かう吉野さんの後ろ姿を見送る。

手にあるスマホの画面には、新たに登録された友だちの欄に、吉野北人

こんなことがあっていいんだろうか

もしかして、長い長い
長すぎる夢の中にでもいるのかな、私