先輩は教祖らしい 壱 【童磨】

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「さあ。家まで送るよ」

『いや、一人で帰れます』




童磨先輩の家がどこか知らないけど、送ってもらうなんて手間をかけられない。ただでさえ奢ってもらったというのに…




「もう暗くなってきてるんだよ？女の子一人で歩かせるなんて…もしAに何かあったら俺、生きていけないよ」

『で、でも…』

「いいの！元はと言えば俺が君と話したいって言ったんだし、このカフェを選んだのも俺でしょ？だから素直に送られてよ？」




お互いに意地の張り合い


泣いている子どもをあやすかのように、顔を覗き込んでくる先輩


ね？ってニコリと笑われてしまえば、頷くしかない




「よし。じゃあ行こ。家はどっちだい？」

『こっちです』

「わかった」



童磨先輩が歩みを進める瞬間、また手を握られる


触れる手が冷たくて、


驚いて手を握り返せないし、前に進むこともできない


やっぱりこの景色、見たことがある。デジャブなんだ




「どうしたの？また胸が痛む？」

『そうじゃなくて…』

「ん？もしかしてもっと俺と話したい？帰りたくない？」

『そんなんじゃないです！平気です！』




先輩の冗談に頬が赤くなる気がした


人を揶揄うのが好きなのか？この人は…


私は手を自然に手を離して、スタコラと歩き出す




「えー。そんなこと言わないでおくれよ？このまま俺の寺院に来たらいいのに」

『知りません！』




幼児のように駄々をこねながらも私についてきて、先輩はしつこい





それをなんとかやり過ごして、二人はAの家にたどり着いた



「A」



玄関の扉を開ける直前、呼び止められる



「ほんとは明るいんだから、もっと笑いなよ。俺はAの笑った顔好きだよ」



ザクッと


私の核心を突かれたような気がした。呪いをかけられたみたいに、手も足も動かなくなってしまう。



『あり…がとうございます。今日は楽しかったです。気をつけて帰ってください』



震える声をごまかすように、先輩の姿を見送らずに家の中へ入った


瞬間、自縛が解けたかのように私はスルスルと足から崩れ落ちていく




先輩、私には理由があるんです




一人、目を瞑り涙を堪える




まさかとは思ったけど、この胸の鼓動は…


いや、そんなものであってはならない絶対に。


怖い


せっかく私は今の私を留められているのに。また逆戻りするのが怖い






ねえ先輩、




先輩は私を裏切らないって約束できる？

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