先輩は教祖らしい 壱 【童磨】

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仕方ない飲んでやろう



渋々と先輩の差し出したマグカップに口をつける


ミルクティーの冷たさと、あの甘さの後に飲むと余計に分かる



…うん、やっぱりまずい


どう考えても私には大人の味すぎるんだ


口の中にじわじわと伝わる苦さ



…あぁ、なんか気がついちゃった


ミルクティーは先輩で、私はコーヒーなんだ


甘くて優しくて、しつこいけどしつこくなくて


まるで先輩を表しているかのような______




「どう？」

『苦いけど…』

「アハハ！苦いけど美味しい？」



童磨先輩は身を乗り出して、机に立て肘をつき私を見つめる


その瞳はキラキラと虹色に光り輝いている


吸い込まれてしまいそうで、思わず目を逸らす




『大人の味です』



そっぽむいたまま答えると、子どもみたいな反応をするねえって微笑む先輩


間違ってまたその瞳を見てしまえば…分かってる


もっと後戻り出来なくなるって



「ねえ」

『なんです？』




挙動不審


この言葉が一番、今の私にふさわしい言葉かもしれない


必死に目を合わせないようにするのを見て、先輩は間違いなく面白がっている




「Aは本、よく読むの？」

『ま、まぁ』






童磨先輩は話してみるとすごく気が合う人だとわかった


今まで読んだ本も似通っていて、好きなジャンルもかなり似ていた


私がこの本が面白かったと話せば先輩も、それ俺も好き！なんて食いついてくる


なによりも驚いたことに、先輩は宗教の跡取り息子らしい


ゆくゆくは寺院を継いで、たくさんの人を救いたいんだそうだ


…なんだかあの本の男の人みたいだ


噂やあのヘラヘラした見た目とは違って、たくさんのことを知っていて博識だった先輩




「さあ、もう日が暮れたことだし。今日はお開きにしようか？」





ちょうどミルクティーがグラスからなくなった瞬間、先輩はそう言った


確かに、この窓辺からはもう光は差し込まない


薄暗くなっていた





『ご馳走様です』

「いいえ〜」



お会計を済ませてお店を出ると、童磨先輩は月を見上げながら口を開いた


まだ完全に日は暮れていないから、月はうっすらと見えるだけ。それでも今日は満月だと分かるほど、月は丸かった

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