先輩は教祖らしい 壱 【童磨】

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『なんで伊之助って、みんなの名前をちゃんと言わないの？もしかして、覚えてない？』

「あー」

「コイツはそーゆーやつなんだよ」



善逸と炭治郎はもう慣れたかのような口調



「初対面で炭治郎のこと、かまぼこ権八郎って言ったんだぜ」

『ハ！？』



待って


お腹痛い！！


かまぼこって(笑)(笑)(笑)




『3人がかまぼこ隊って呼ばれてるの、それが理由ってことー？』

「そうなんだよ。でも伊之助は、ごく稀にちゃんと名前を呼んでくれるんだ」

『え、なに？恥ずかしがって言えない感じ？ウケる。伊之助やっぱり可愛いねえ」





伊之助の頭をポンポンと撫でてあげる


やめろよ！って嫌そうに頭をぶんぶん振る伊之助


そこも野生児感があって可愛らしい


離さずにヨシヨシし続けると、ふいに伊之助は真面目な顔になる




「Aも笑うんだな」

『え？』

「なんかお前、あんまり笑わないと思ってたから。人間らしくて、いいと思う」

『…そう』




やだな、私、笑ってたんだ


自分で自分が意外に思えるよ


私もなんだか照れ臭くて、伊之助の顔を見れなくなってしまう




「あー、美味しかった！さ、もう帰ろうぜ」



妙に静かになってしまった空気から逃げるように、善逸が席を立った


そうだな！なんて炭治郎も席を立つ


そっか、もう帰らないといけないんだもんね






「A、善逸！また明日！」

『バイバイ』




炭治郎と伊之助に手を振って、私と善逸は歩き出した


二人はこの駅を起点にして、真逆の場所に住んでいる


善逸と私は家が近いので、同じ方向に帰ることになる


しばらく私たちは無言で歩いていたが、善逸はゆっくりと口を開いた



「俺、久々にAの笑った顔見たよ」

『うん』

「お前あれからずっと悲しい音してるけど、今日はなんか違う。何かあった？」

『別に…』



なにもないよ、ないって信じたいけど


あの先輩と出会った以外はなにも…いつもと変わらない



「いいこと、あったの？」



善逸の歩みは止まった。けど何か探るような口調は止まらない



『うるっさいわね！帰る！また明日！』



私の無駄にデカい、見かけだけは良い家


玄関に向かう階段を一気に駆け上がる



「おいA！また何かあったら連絡しろよ。俺、お前のためならいつでも『わかったから。おやすみ』




善逸の言葉を遮って家の中へ入る


もう春が終わり初夏がやってくるというのに、家の中は真っ暗で、寒かった

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