玖 ページ9
.
「 どうしたのですか?
今日は診察の日ではないはずでは… 」
『 うん、今日はしのぶに伝えなきゃならないことがあって 』
小さく首を傾げるしのぶ.
今日でしのぶの姿を見るのも最後だろう.
『 実は、ずっと前から余命を告げられていたんだ. 』
「 ……えッ 」
小さくか細い声.
綺麗な紫色の瞳が大きく揺れた.
『 黙っていてごめんなさい. 』
「 …… 」
下唇をきゅっと噛み、じっと私を見る.
『 昨日も喀血しちゃってさ. 今もちょっと苦しい.
もしかしたら、会えるのが今日で最後になるかもしれない. 』
ガタンッと音をたて立ち上がるしのぶ.
「 なんで、なんで言わなかったんですかッ!? 」
『 しのぶが大切な親友だったから. 』
「 親友なら尚更です! 」
ごめんね、しのぶ.
親友だからこそ、言えないこともあるの.
私もゆっくり立ち上がり、しのぶを抱きしめる.
『 しのぶ、今まで本当にありがとう. 』
「 ……ッ 」
「 せめて、貴方を看取らせてください…… 」
『 しのぶ…
ごめんね、それは、出来ない… 』
最期に願いを叶えるためにも無理なのよ.
こんなこと今聞くのは不謹慎かもしれないけれどさ、
『 ねぇ、しのぶ.
しのぶは、鬼と仲良くしたいと思う? 』
「 ……何を言っているのですかッ 」
『 しのぶと、カナエさんの願いだから.
前に鬼も仲良くすればいいのに、
そう言っていたからさ… 』
「 ……そんな都合のいい話はもうありません.
鬼に情けをかけるなんて馬鹿げています… 」
うん、そうだよね.
しのぶも鬼と仲良く、なんて口にしていたけれどそれは本心ではなかった.
カナエさんの言葉を真似て、
カナエさんの様に笑う……、
『 しのぶとカナエさんの願いは、私が最期に叶えるから 』
動揺した瞳が私を捉える.
『 しのぶ、ちゃんと笑って生きてね.
私も、しのぶの笑う顔が大好きだから. 』
「 A、何を言って____ 」
『 さようなら、しのぶ… 』
小さく手を振り、病室を出た.
.
600人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
m - 夜遅くにすみません。先程、刀鍛冶の里編を見てきました。そのせいか、物語がより綺麗に見えて鬼を本当に好きになれました。この作品を知った時と鬼滅の刃を好きになった時は違いますが今、この作品に会えて嬉しいです。この作品を作ってくださりありがとうございます。 (2023年4月10日 1時) (レス) @page17 id: 6abbe396c0 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 数年後からこんにちは(?)めちゃくちゃ泣きました…。キメツ学園とかの世界線で二人がまた出会えていると良いなぁ…(解釈違いだったらすみません) (2023年3月14日 1時) (レス) @page17 id: 699f0917a9 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ(童磨推し) - 泣けました。すごく感動しました。大好きです!! (2020年5月16日 12時) (レス) id: 5357f72739 (このIDを非表示/違反報告)
リャオトン(プロフ) - メッチャ泣けました( ; ; )ハッピーエンドも好きだけどこういう終わり方が1番切なくて好きですTT本当に泣けましたありがとうございました!次も頑張ってください! (2020年4月22日 23時) (レス) id: 4ccf657d3b (このIDを非表示/違反報告)
にゃんこ - 今更凄いですけど、この作品で、人間と言うものはとても尊い者なんだと気付きました。とっても感動しました。 (2020年4月1日 5時) (レス) id: e646d1c815 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まっちゃろん | 作成日時:2019年11月11日 17時