処方箋.07 ページ8
いつも通り、環とミリオと昼食を摂る。
たまに幼馴染の焦凍とも食べるが、最近焦凍は食堂のお蕎麦にハマっているらしく、お弁当派の私とは別だ。
屋上で日の光を浴びながら食べるお弁当は最高だ。
「あ、環の唐揚げ美味しそう」
「Aもあるじゃないか」
「私の冷凍だから」
「……欲しいのか？」
「うん」
「いいよ」と言ってくれた環に感謝し、環の唐揚げを頬張る。
環のは冷めているのにどうしてこうも美味しいのか。
こんな風によく分けてもらうのだが、環のはいつも美味しい。
……“個性”が食に関係してるから、環のお母さん料理頑張ってるのかな？
「……今日の弁当、実は俺が作ったんだ」
「え、そうなの!? すごく美味しいよ！」
「……口に合うようでよかった」
頰を掻き、照れ笑いを浮かべた環。
「そんなに美味しいなら俺もくれよ、その唐揚げ！」と割ってきたミリオに、自分のおかずが減っていくにも関わらず、二つ返事であげる環に寛大さを感じた。
お返しに私も何かあげようかと思案したところで、
「セキリュティ3が突破されました。 生徒の皆さんはすみやかに屋外へ避難してください」
穏やかな昼には似つかわない、けたたましい警報音にアナウンス。
「セキリュティ突破……!?」
「ミリオ……？」
「ッ報道陣……!?」
3年間一度もなかった事態に慌てる私に対して、フェンスに駆けつけたミリオ。
私たちもそれに続いて下を覗く。
破壊されたセキリュティに加え、押し寄せているマスコミたち。
そして────
……思わず、顔を顰めた。
「ただのマスコミがこんなこと出来ると思うか？」
「思わない──誰か、唆した奴がいると思う」
「俺もそう思う……A？」
「……あれ、」
門の前、マスコミから離れたところで一人佇んでいる男────
遠目からであまりよく見えないが、薄い水色の髪に、何かを顔につけている。
あれは────手？
目を凝らして“個性”を発動させようとするが、目の奥でチカチカと点滅する感じがするだけで、相手の情報は表れない。
その佇まいからか────かなり危険な人物な気がした。
そいつが、この暴動の犯人な気がした。
じっと目を凝らす。
瞬きすら惜しく、乾燥した眼球が潤み、視界が歪む。
あともうちょっと……！
フェンスを掴む手が無意識に強くなり、フェンスが軋んだ。
男は長らく佇んだ後────徐々に吸い込まれていく。
「おい、Aっ！」
「やってる！……っけど……」
痺れを切らしたようにミリオが私を急かす。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 398人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
つめきわに - 違うお話ですみません。コメント失礼します。かりそめて接吻のパスワードはお教えいただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。 (2021年3月23日 23時) (
レス) id: fa5f26b543 (このIDを非表示/違反報告)
エイブル(プロフ) - ゆづしおさん» ぐはぁっ！「大好き」だなんてそんなありがとうございます！「先生の字が欲しいです！」って夢主様が言ったら「合理的じゃない」云々言いそうですけど、結局は書いてくれそうですよね…尊い…… (2020年3月7日 12時) (レス) id: ec408804c6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆづしお - この小説、心情描写がもう素晴らしくて大好きです…！！……あ、相澤先生の生字…金出してでも欲しいですな、10万までならOKですけど…プライスレスですよねぇ… (2020年3月6日 21時) (レス) id: a103d81c3f (このIDを非表示/違反報告)
エイブル(プロフ) - 絢兎さん» 順番前後してしまいすみません！教師から生徒……書いていて最高です笑 (2020年3月6日 21時) (レス) id: ec408804c6 (このIDを非表示/違反報告)
エイブル(プロフ) - xxvl6w6lvxxさん» 返信遅くなりすみません！相澤先生の字、生で見てみたいですよね……お気持ちすっごくわかります！ (2020年3月6日 21時) (レス) id: ec408804c6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Able | 作者ホームページ：
作成日時：2019年12月26日 17時
