処方箋.25 相澤消太 ページ26
USJ襲撃から休み明けのあの日、わかってしまった。
Aが、俺のことを好きなことに。
教師なんてものをやっている以上、生徒の感情には鋭い。
そして俺を見る目が、いつもとは違っていた。
熱を孕んだ、あいつの目。
見間違いかと思った。
だが、俺と目が会うたびに不自然に目を逸らされるのを感じ、見間違いなんかではないと確信した。
授業の最後の五分、演習にしていた時間。
Aは時計を見てから、流れるように俺に視線を寄越した。
提出物のチェックをしていて、たまたま寝ていなかったからわかった。
どうして俺なんだ。
そんな意味を込めて首を傾げた。
あいつはただじっと俺を見ていた。
きっと意味がわからなかったと思う。
好きなヤツの好きな人ぐらい分かるとはよく言うが、ホントにわかるもんなんだな。
なんでだ。
なんで俺なんだ。
その時は、嬉しいという気持ちよりなぜ自分なんだという疑問が勝り、なんだか妙な気分だった。
それでも日に日にあいつが俺を好きだと自覚する度、実感が湧いてきて、つい手を伸ばしてしまいそうになる。
例えば廊下で、職員室で。
どこからか視線を感じる。
横目で探せばAが俺を見ている。
「俺もおまえが好きだ」と、どうしようもなく言いたくなる。
抱きしめて、腕の中に閉じ込めて。
あいつを俺のものにしたくなる。
そんな、醜い独占欲を覆い隠すためにも、あいつと距離を置いた。
話しかけに行かなくなった。
目を合わせないようにした。
Aが近くにいるとき、いつも視線を感じた。
だがあいつは変に距離を詰めようとはしなかった。
それは俺にとっては好都合であり、寂しくもあった。
グラグラと揺れる中途半端な自分が一番嫌だった。
卒業式には、一緒に写真を撮った。
Aは少し涙ぐんで、寂しそうに仲間たちを見ていた。
その大人びた横顔を見て、少し変な気持ちになった。
今まで一度も感じたことのない、気持ちだった。
「……こんばんは」
「……ん」
翌日の夜。
店員に案内され、個室にやってきたAは、とても昨日まで高校生だったようには見えなかった。
「……なんか顔違うな」
綺麗だ、と内心付け足す。
いつもより発色のいい紅色の唇に目が行き、すぐに視線を逸らした。
「ちょっとおめかししてお化粧したんです。 ……変、ですか？」
「……いや、その……綺麗だ」
ちょうどお冷とメニューが頼まれてきて、内心ホッとした。
ちらりとAの顔を見ると、耳に赤みがさしていた。
妙な気持ちがこみ上げる。
……思ったより余裕がない。
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つめきわに - 違うお話ですみません。コメント失礼します。かりそめて接吻のパスワードはお教えいただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。 (2021年3月23日 23時) (
レス) id: fa5f26b543 (このIDを非表示/違反報告)
エイブル(プロフ) - ゆづしおさん» ぐはぁっ！「大好き」だなんてそんなありがとうございます！「先生の字が欲しいです！」って夢主様が言ったら「合理的じゃない」云々言いそうですけど、結局は書いてくれそうですよね…尊い…… (2020年3月7日 12時) (レス) id: ec408804c6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆづしお - この小説、心情描写がもう素晴らしくて大好きです…！！……あ、相澤先生の生字…金出してでも欲しいですな、10万までならOKですけど…プライスレスですよねぇ… (2020年3月6日 21時) (レス) id: a103d81c3f (このIDを非表示/違反報告)
エイブル(プロフ) - 絢兎さん» 順番前後してしまいすみません！教師から生徒……書いていて最高です笑 (2020年3月6日 21時) (レス) id: ec408804c6 (このIDを非表示/違反報告)
エイブル(プロフ) - xxvl6w6lvxxさん» 返信遅くなりすみません！相澤先生の字、生で見てみたいですよね……お気持ちすっごくわかります！ (2020年3月6日 21時) (レス) id: ec408804c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Able | 作者ホームページ：
作成日時：2019年12月26日 17時
