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苗字呼びが基本だが、心の中ではついAと呼んでしまう。そのことをまったくもって合理的じゃないとわかりながらも、さらさらやめる気も起らない俺は侵されてしまっていると言っても過言ではない。
「相澤先生」
「ん、なんだ」
授業後、教壇から降りて立ち去ろうとした彼を引き止めたのは、教材を持ったA。最初の授業の日の放課後、彼女の名前と�犖沈��瓩魍稜Г靴燭箸�、聡明そうな顔立ちに納得がいった。きっと彼女は目敏いのだろうと予想した彼の考えは今のところは当たっている。ふとしたところで気が利くのがその裏付けとなっている。
教員としては生徒に好意や嫌悪はそもそもないが、彼女の印象として真面目ということが加わったのは、好感度がプラスに転がったのでいいことなのかどうか彼には判断が付かなかった。
相変わらず(と言えるほどの月日は経過していないが)健気で真面目な彼女を捉えて彼は目を細めて、それを隠すように瞬きをした。
「お時間を取らせてしまってすみませんが、この前の演習でわからない問題があって……」彼女は教材を見て、それから彼の眼を真っ直ぐ見て言った。彼はいつも通り表情筋を働かせて澄ました顔で答えた。
「あぁ、あれは結構難しいからな。解説読んでどうだった」
「途中までは理解できたんですが、法律が触れると私どうも駄目みたいで……」彼女は指で頬を掻いて、困ったように眉を下げた。
彼は彼女のその顔に何か刺さるものがあり、形の整った眉が下がる様に、可愛いなんて感想を抱いた。そしてそれをすぐさま否定した。俺は何を考えてるんだ。ああクソ。
「あそこらは覚えてないと後半苦労するぞ。手抜くなよ。 今はちょっと時間取れそうにねえから、放課後職員室に来れるか」
澄まし顔で話す自分がひどく穢れているように感じた。彼女はこんなにも無垢だというのに。彼には矛盾や葛藤を抱えた自分に嫌気が差すことがしばしばあった。
「わかりました。お仕事、頑張って下さい」
「……ああ、おまえも勉強頑張れよ」
生徒でありながらもねぎらいの言葉をかける彼女に勝手に手が伸びていて、気づけば彼女のの頭をぽんぽんと優しく撫でていた。初めて触れた髪は、柔らかく、シルクのように滑らかだった。
彼女の体温が俺にも伝染したように指先から熱が広がって、じわじわと体を侵食する。指先の血液が沸き立つような感覚が癖になりそうだった。職員室に戻る際、だめだと思っていながらも、禁忌を犯すような気持ちでそっと彼女に触れた指に口づけた。指先からは、微かに甘い匂いがした。
「恋」という病に、侵された俺は。
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つめきわに - 違うお話ですみません。コメント失礼します。かりそめて接吻のパスワードはお教えいただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。 (2021年3月23日 23時) (
レス) id: fa5f26b543 (このIDを非表示/違反報告)
エイブル(プロフ) - ゆづしおさん» ぐはぁっ！「大好き」だなんてそんなありがとうございます！「先生の字が欲しいです！」って夢主様が言ったら「合理的じゃない」云々言いそうですけど、結局は書いてくれそうですよね…尊い…… (2020年3月7日 12時) (レス) id: ec408804c6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆづしお - この小説、心情描写がもう素晴らしくて大好きです…！！……あ、相澤先生の生字…金出してでも欲しいですな、10万までならOKですけど…プライスレスですよねぇ… (2020年3月6日 21時) (レス) id: a103d81c3f (このIDを非表示/違反報告)
エイブル(プロフ) - 絢兎さん» 順番前後してしまいすみません！教師から生徒……書いていて最高です笑 (2020年3月6日 21時) (レス) id: ec408804c6 (このIDを非表示/違反報告)
エイブル(プロフ) - xxvl6w6lvxxさん» 返信遅くなりすみません！相澤先生の字、生で見てみたいですよね……お気持ちすっごくわかります！ (2020年3月6日 21時) (レス) id: ec408804c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Able | 作者ホームページ：
作成日時：2019年12月26日 17時
