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「失敗」と赤い袋 ページ40

「もう諦めたらどう? ……そんな様子だったら、相手をするこっちもやりにくいんだけど」

 一度剣を下ろしてアズサは問う。相手の言霊により強く吹雪く風で視界は不良、気を抜けばすぐに歯ががちがちと音を立てそうだったが――相手は自分よりもひどそうだ。反作用か、黒髪は色素が抜けて雪のようになっているし、その髪色と区別がつかないほど、肌にも血の気がない。ただ青い唇と赤紫色の瞳だけが色を持っているが、その目もほとんど焦点が合っていなかった。
 しかし気概だけは健在のようで、小鹿のように足を震わせながら立ち上がる。真っ白な足に、土ぼこりと赤い血がいやに映えた。
 何か言おうとしたようだが、冷気を吸い込もうとしたところで喉が凍てついたらしい。ひゅ、と音にならない音がする。
 けれどなおこちらを一点に見つめ続ける相手に、アズサは白い息を吐きながら目を伏せた。次の一瞬、瞳が冷気を溶かすように熱く、相手を刺した。今一度、剣の切っ先が上段へ上がる。

「分かった。その覚悟なら私も止めない。――ほら、行くよ!」

 アズサはそのまま、硬直しそうな筋肉を叱咤してかけだし、左足で地面を蹴って飛び上がる。瞬間、びゅう、とひときわ強く風が吹き、より一層視界は悪くなった。相手の白さと相まって、姿を見逃してしまいそうになるほどに。
 でも大丈夫、身体はぶれてない。これで、仕留め――
 そう彼女は確信して、そのまま踏み込み、確実に貫くことができるよう、より柄を握る手に力を込めた。

「え?」

 が、予想もしていなかった展開に、アズサは思わず素っ頓狂な声を出した。そこには狙いに反して、迎え撃ってくる刃も斬るべき肉もなかったのだ。当然剣は、それを握るアズサは、そのまま重力にしたがって地へ引き寄せられる。
 慌てて彼女は体をひねって、どうにか着地を右半身でした。受け身がとれたため衝撃は少ないが、吹雪による足場の悪さもあり。すぐに立ち上がることができない。
 その瞬間、吹雪のスクリーンに、人影が映る。動きの固い、不自然な走り方。
 わかる。彼女だ。――私は、まんまと引っかかってしまったというわけか!
 立ち上がって彼女を追う。しかし、近づけば近づくほど吹雪はひどくなり、やがて完全に真っ白になる。

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紫清(プロフ) - 嵩画さん» 温かいお言葉ありがとうございます! 読んで下さる方がいるということが何よりの励みになりますので、今後ともよろしくお願い致します。 (2020年3月16日 18時) (レス) id: 840643cfcd (このIDを非表示/違反報告)
嵩画(プロフ) - 毎回更新される度にわくわくしながら読ませて頂いております…今後の展開が非常に楽しみです。お忙しい時期だとは思いますが、頑張って下さい。 (2020年3月16日 17時) (レス) id: 34e937d538 (このIDを非表示/違反報告)
紫清(プロフ) - ももせさん» ありがとうございます! 長くなりそうですが、お付き合い頂ければ幸いです。 (2019年9月26日 0時) (レス) id: 85ba6a0490 (このIDを非表示/違反報告)
ももせ - 小説版すごく楽しみにしていました!今後の展開が気になる…更新楽しみにしてます!! (2019年9月23日 23時) (レス) id: a031215c05 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紫清 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年9月23日 23時

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