鑑識課の女5【名探偵コナン】

裏切りのステージ6 ページ1

ポカンとした表情で聞いてくる安室にAは驚いた。周囲の状況の把握が出来ないほどに他ごとに囚われていたのだろうか。先ほど安室は何か深い思考の中に入っていたようだった。


(彼をこうさせる人物は1人しかいない…。)


スコッチのコードネームを与えられて組織に潜入していた降谷の幼馴染。彼は胸ポケットに入れた携帯電話ごと自身の心臓を撃ち抜いた。
Aはハッとすると、うつむいて奥歯をぎりっと噛んだ。彼の最期のことを思い出していたに違いない。
Aは目を瞑り大きく深呼吸すると、表情を戻して安室と向き合った。


「もしかしたら犯人が入れた紙かもしれないので筆跡鑑定をする事になったんです。」
「そういう事なら…」


お互いポーカーフェイスの笑顔でかわす会話に違和感はなかった。だが、その様子をコナンだけは意味深な様子で見ていた。



「梓さんも、字を…」
「はーい！」


ピッタリと張り付いたような笑みでAはベルモット扮する梓にも文字を書くように言った。スラスラと梓の苗字まで書くベルモットにAは流石だと思った。と、同時に緊張で背中に嫌な汗が滲むのも感じた。絶対に彼女の前で失態を犯してはいけない。
ベルモットも字を書き終わり、Aのそばをベルモットが離れると、Aは小さく息を吐いた。

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