純恋愛のすゝめ【Yuto.T】 (ページ2)

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2話ページ2

「…え？今なんて？」

「だから、家燃えたんだって」

「まじかよ…」

家を失って3日目の朝。出社するなり「どうして昨日来なかったのか」と問い詰めて来たのは同部署配属である同期の髙橋優斗。
普段は明るく、特徴的な笑い声を新卒の頃からオフィスに響かせていたが今回ばかりはそうも行かないらしい。

「なんで燃えたの？ガス消し忘れ？」

「ううん、隣からの貰い火。しかも私もお隣さんも火災保険入ってなかったのと、基本的に延焼は賠償ないんだって。やばいよね」

「うーわ、一番最悪なパターンじゃん。ていうかお前割と冷静だからビビるわ」

冷めた目で頬杖をつく髙橋に指摘され、初めてその事に気付く。冷静、というよりも実感が湧かないのが本当のところだ。まだあそこに私の帰る場所があるんじゃないかという錯覚にすら陥る。

だけど実際にはそんなはずも無く、昨日は一日バタバタとしていた。とりあえず実家に連絡して、役所で手続きをして、奇跡的に一部だけ残っていた衣類や化粧品などをキャリーケースに詰めてホテルに宿泊して。新しい家が決まるまで暫くホテル生活だろう。

「そういう事があって昨日は来れなかったの。あ、新卒の指導押し付けてごめんね」

「まあそれはいいんだけどさ……。てかお前今どこ住んでんの？ホテル？」

「うん、ここから5分くらいのとこ」

「……そっかー。………」

キャスター付きの椅子をゴロゴロと動かしながら、うんうん唸る彼を尻目にメールに目を通す。そういや今日アポ入ってたっけ。

「……あのさあ」

「うん」

あー、ここも急ぎで会わないと駄目っぽいなあ。新卒教えながら2社回る時間なんてあるのか。

「次の家決まるまで俺ん家来る？」

「……うん？」