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◆2021◆春





それなのに、数年後の春。

雑貨屋で予約していた品を受け取ろうとしていたところで、私と北斗くんは鉢合わせした。
普通に「Aちゃん」なんて話しかけてくるのが信じられなくて、腹が立って、無視を決めて店から出たら腕を掴まれて人気のない道に連れて行かれた。
そして、「あんまり外で話してたら撮られるかも…」と私を脅して、あの海老の天ぷらが美味しいらしいご飯屋さんに連れて行ってくれた。





彼の初めてを知ってるから、誰にこんな官能的なキスを教えられたんだろうと胸の奥がもやもやした。
どうしてこんなに、夢中にさせるくらい何もかも上手いんだろう。……ずるいって思った。
息がうまくできなくて、酸欠でふらふらになった私を見て北斗くんは笑った。
「ごめん、手加減できなかった」なんて言って、そして、私の手を引っ張ってリビングのソファに座らせて。
用意していたのか、温かいカフェオレの入ったマグカップを渡してくれた。
何もかも余裕でモヤモヤする、と思っていたら「その顔、可愛い」と言われた。悪趣味がすぎる。

「……むかつく、北斗くん」
「ええ、悲しい」

悲しいとか言いつつ、楽しそうにしてるからさらに腹が立つ。
俯いて黙り込んだら、泣かないで?って、私の両頬を持って顔を覗き込んでいた。
私は全く、泣くつもりはなかったし、その兆候もなかった。北斗くんも、そうじゃないって分かって言っていた。
泣かないで?って、その言葉は。ふわふわした、あまい洋菓子みたいに……恋人の戯れみたいな言葉だったから。
私は、その言葉に泣かされた。

鼻がツン、として目元に熱がいくのがわかった。厚い涙の膜があっという間に瞳を覆って、ぼやぼやした世界の向こうに驚いた顔した北斗くんが見えた。

「えっ、Aちゃん!?どうした?」
「……、」
「意地悪しすぎた?……ごめんね?」

ソファの、隣に座る北斗くんは子供をあやすように私を抱き締めた。
そして、とんとん、と私の背中をはたいて「泣かないで?」って、困った声を出した。
その声は、くっついた身体から伝わって、私の頭をぼんやりと支配した。
私はきっと、この人に今どんなに酷いことを言われたって好きでい続けられる。

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設定タグ:SixTONES , 松村北斗   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:こより | 作成日時:2021年9月15日 12時

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