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◆4.






朝、会社に出る用意をしていると春ちゃんに呼び止められた。

「何ー?」
「A、ちょっと来て」
「え、待って!今眉毛書いてる」
「眉毛書いたら来て」
「はーい」

ベースと眉毛だけ書いた格好で行くと、ガーゼで巻いた保冷剤を渡された。

「え」
「目、ひっどいよ。泣いたの?」
「……すこし」
「会社のこと?」
「違う、幼馴染のこと」
「叩き起してくる幼馴染か」
「…ふふ、うん。そう」
「酷いこと言われた?」
「ううん……違うけど、私が悪いし……ちゃんと謝ってくれたからいいの」
「そう?」

じゃあいいけど、と春ちゃんはバッグを持って先に家を出て行った。

「春ちゃん行ってらっしゃーい!気を付けてね!」
「はーい、Aもね」

ガシャン、とドアと鍵が閉まる。
保冷剤をあてながら、パンをぱくぱく食べてるとLINEの通知音がした。
片目ずつ冷やしていたら、スマホに北斗くんからのメッセージがきていた。

恐る恐る既読をつけないようにそれを見たら、『昨日は本当にごめん』と来ていた。ごめん、なんだと思ってたら『このごめんは、泣かしてごめんの意味だから』と来た。
………なんか、気持ちが読まれてるみたいで嫌だなあ。


あの後、私はあろうことか北斗くんにキスされて大泣きした。
まさか泣かれると思っていなかったらしく、あわあわしながら高そうなハンカチで涙を拭ってくれた。
嫌だったわけじゃない、と謝りながら泣く私を見て北斗くんは「……順番が違ったね、ごめん」と謝ってくれた。

でもそれは、彼にとっての恋愛の常識と私にとっての常識が違うことを突きつけられた気がして、苦しくなった。
彼が変わってしまったことを目の当たりにして、しんどくなった。
余計に泣く私に、「…嫌だった?」と聞いてきた。そんなの、した後に聞くのは間違ってる。それに、嫌じゃないことくらいわかるでしょって腹が立った。


そうじゃなくて、ただ。……漠然と、怖くなったんだ。何百万人とファンがいるこの人と、恋愛をしようとしている。それも、もう分別のつく大人の立場で。
ぐすぐすと泣く私を、北斗くんは甲斐甲斐しく宥めてくれた。彼と知り合って十何年も経つけれど、こうやって泣くのは初めてだった。だから、彼も動揺していた。

タクシーは、他のタクシー待ちのお客さんに譲って。北斗くんは、私が泣き止むまで背中を擦ってくれた。
そして、だいぶ落ち着いた頃に。…………なんてことをしてしまったんだ、と思った。

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設定タグ:SixTONES , 松村北斗   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:こより | 作成日時:2021年9月15日 12時

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