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躊躇う瞬間の美しさ






数年ぶりの、彼との再会を、私は別に望んではいなかった。いなかったのだけど、間抜けにも彼と接点を持ってしまった。そして、捕まってずるずるとご飯屋さんに引きずられてきた。

この数年、何度もテレビで見ていたはずなのに。こうやって会うと、本当にアイドルなんだって現実を突きつけられて……勝手に苦しくなっていた。

……何飲みたい?と、彼が言うのをぼんやり聞いていると「Aちゃん?」と、困ったように笑われた。


「あ、ごめ………ボーッとしてた。烏龍茶がいい」
「烏龍茶?お酒もあるよ?」
「北斗くん、どうぞ?」
「……や、俺もそんな好きって訳じゃないから」


静かな雰囲気の、全室個室のご飯屋さんは何だかそっちの世界の人、って感じがした。
いや……もう10年以上彼はそっちの世界の人なのだけど。
メンバーに教えてもらった店なんだ、と楽しそうに笑う彼を見ていたら心がじんわり温まった。

「ねえ、大丈夫?私なんかといて」
「私なんかって何」

ムッとした顔をされたから、相変わらず人たらしだな、と思った。

「アイドルが同年代の異性の、よう分からん女といて大丈夫なんですかってこと」
「Aちゃんは大丈夫」
「北斗くんは大丈夫かもだけど、まずくないの?」
「………ここだけの話」
「ん?」
「Jr.時代からずっと全く彼女いない人なんて、いないよ」
「北斗くんも?」
「俺は………」

トントン、と襖が叩かれて失礼します、と綺麗な着物を纏った方が入ってきた。
旅館でもないのに、懐石料理なんて言葉、初めて聞いた。
用意しますが、食べられないものございますか?
言葉がはんなりしているから、こっちの人ではないのかもしれない。でもそれが、妙に落ち着いた。

北斗くんが、「甲殻類が、」と言ってお姉さんがメモをする。
きちんと毎回洗っていますが、同じ鍋やフライパンで料理しているものは除きますね。と丁寧に案内された。

「私は……、生ものが。……すみません」
「あら、謝らないでください。加熱したものは食べられますか?」
「はい」
「そういう方は珍しくありませんから。すぐ用意しますね」

この年で好き嫌いがある事自体、恥ずかしいのだけど。
俯きがちに言うと、お姉さんが優しくしてくれたのも何だか恥ずかしかった。
北斗くんが飲み物を頼んで、襖が閉まる。

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設定タグ:SixTONES , 松村北斗   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:こより | 作成日時:2021年9月15日 12時

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