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*1.






ぽとん、と前を歩く男の人がパスケースを落とした。

19時過ぎの街は、そこそこに人が多いのに、何故か私と彼の間には数メートルの距離があって………それは私が意図的に作り出していたからだけど。
二、三歩歩けばそのパスケースに私は辿り着いてしまった。
そしてなんとも間抜けなことに、立ち止まってしまった。

そしたらもう、これは私の管轄になってしまう。

少し古びて傷のついた、……でも大切に使われてるんだろう革のパスケース。

まさかこれをポケットに入れることはしないけど、見てみぬふりも許されない。
…………恥の文化に降参だな。

はあ、と溜息を一つ吐いて拾う。

すこし柔くなった革が、私のはめている指輪に擦れたけど。それは別に、不快じゃなかった。

そのまま早歩きで男の人に「……あの」と言えば無視された。
今度は大きめに「すみません」と肩を叩くと、やっと怪訝そうな顔をして振り向いた。

「落としましたよ」

パスケースを差し出すと、彼は警戒した表情を緩めて、「あっ、すみません。ありがとうございます」と慌てた。
そして、「感じ悪かったですよね。ごめんなさい」と頭を下げた。

高い背、ロングコート。帽子にマスク、それにマフラー。
大げさすぎる防寒は、うまい感じに彼の雰囲気を隠してくれると思った。
彼の少し焦った、愛嬌のある言葉に何も言わずに、曖昧に会釈だけしてその場を離れる。


多分私がファンだと思ったのか、違うとしてもナンパかなんかだと思ったのか。
どうでもいいけど、胸を締め付ける痛みを誤魔化すように、早足でその場を離れていると………、「あの」と今度は私が声をかけられた。

その声がさっきの男の人のだと分かった上で、私は返事をしなかった。……期待をしたくなかった。
肩を叩かれても、反応をしなかったし、このまま逃げ切るつもりだった。
なのに、


「……A、」


そう言われて、私の名前を呼ばれて。動揺してしまったのが悪かった。
ついでに、振り返って彼と目を合わせてしまったのも悪かった。


「…やっと、振り向いてくれた」
「…………あ、」
「ずっと会いたかった」
「………」
「……Aは?」
「……」
「A?」


「…………私も、北斗に会いたかった」


観念した私の言葉に、北斗は嬉しそうに笑って「…これからのこと、話そう」と言った。
それを聞いて喉と、胸の奥が震えて、涙がこみ上げてきた。

…………もう、いい?

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設定タグ:SixTONES , 松村北斗   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:こより | 作成日時:2021年9月15日 12時

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