83話【お前と】 ページ37
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どれくらい経っただろうか。私にとっては5分くらい経った気がしたが、多分ほんの10秒程度だろう。私と葛葉に静けさが生まれた時間である。
「おい、聞いてんのか?」
赤くて奥が、底が見えない葛葉の目と私の目が交わる。こうして見ると葛葉のまつ毛長いな、とか顔整ってるなとか現実逃避なことを考えてしまう。
「なんで………?」
私は目の前の葛葉に問いかける。何故だか分からなかった。けど、葛葉の顔は苦しそうにこちらを見ている。
「俺が……」
「あれ、A先輩、葛葉先輩何してるんですか?」
「サラちゃん…」
「ぁ………スゥー……別に……何もしてないっす…………ハイ」
サラちゃんの声で振り返ったが、葛葉の慌てぶりに私は思わず葛葉の方を見る。葛葉は人見知りだがここまでとは。
「星川さん、なんで僕の話途中で抜けるの!?」
「A先輩が葛葉先輩と何か話しているのが見えたので」
サラちゃんの後ろから叶さんが走ってきてサラちゃんに話しかける。やはり叶さんは私達を2人きりにしようとサラちゃんを止めていたようだ。
「叶、もういいから」
「え?」
「話はもう終わった。だからもういい」
「あ、そうなの…」
葛葉の言葉に叶さんは目を丸くし、答える。葛葉は私の耳元で一言を発した後立ち上がり、水買ってくると歩いていってしまった。
「A先輩何もされてないですか?」
「……うん。大丈夫」
「僕、葛葉のとこいってくるね」
「……あ、私、明那と不破先輩のところ行ってきますね…」
「星川、ちょっとトイレ行ってきます!」
皆それぞれ別の方向に歩いていく。私は明那と不破先輩のところに足を進める中、先程の葛葉の言葉を思い返していた。
『暫くお前と距離置かせてくれ』
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作者名:蒼井 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/5291025/
作成日時:2023年9月1日 19時