心の距離 ページ5
--- You side
誠也が長期出張に出発する前日。
いつもなら週末とかに会えれば十分で、たまに少し期間が開くくらいは案外どうってことない私たちやけど、それは会社の中で遠目からでも顔が見れるという前提もある。
長期出張ということは、ほんまに1ヶ月間ずっと会えへんってこと。
この話を誠也から聞いてから、普段よりは少しだけ多めに会って一緒に過ごした。
今日も仕事が終われば一緒に帰って、一晩過ごして明日の朝お別れをするんやけど。
「はぁ〜」
小「どしたん、なんや暗いな」
「うんー。明日からやねん、出張」
小「あぁ、なるほどね。Aでもそんな寂しそうにすることあるんやなぁ」
「それは自分でもそう思う」
シンプルに寂しいだけってわけじゃないけど、なんとも言えへん初めての気持ちになってる。
「寂しさもなくはないんやけどさ」
小「おん」
「なんていうか、わたしが寂しがってへんかって心配かけそうで、それが心配というか」
小「…言いたいことはわかるけど、そんなんキリなくない？」
「そうなんやけどなぁ」
小「それくらい愛されてるんやって」
まぁこんな埒の開かん話をしてても仕方ないんやけどさ。
ちらっと誠也を見ると、こっちにいる間に片付けなあかん仕事で忙しそうで、それを手伝ってる大晴くんも一緒にバタバタしてた。
私も私で頭切り替えてがんばろ。
定時であがりたい一心で、再びパソコンに向き直った。
・
末「Aー」
「あ、おつかれ！あれ、もう終わったん？」
末「おん、予定より早く片付いてさ」
「さすがすぎる…ごめんちょっとだけ待ってて、もう終わるし！」
末「おっけー。……何見てんねん小島(笑)」
小「いや、…なんか、こいつ寂しそうにしてたんで、頼みます。
って俺が言うことちゃうよな、すんません」
末「…いや、心配かけてごめん。ありがとうな」
「……わたしのこと見えてない…？」
末「ははっ、見えてはいるで(笑)」
小「俺は見て見ぬふりしてるけど」
「なにそれ(笑) でもありがとうね小島くん」
小「なにがやねん」
優しいよなほんま。
小島くんにはたまにめちゃくちゃ助けられる。感謝してるで。
「よし！おわり！おまたせしました！」
末「おー、ほな行こか。じゃあ小島、またな」
「お先〜」
小「おつかれさまでーす」
会社の中を誠也と並んで歩くのは未だにファンからの視線が痛いけど、それでも前よりは少しだけ堂々とできるようになった。
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作者名：きうい | 作成日時：2023年1月31日 0時
