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--- Seiya side
高速に入る前、最後の信号が赤に変わる。
しっかりとブレーキを踏んで停車させてから、助手席の彼女の後頭部に左手を添える。
それに反応してこっちに向いたのと同時に引き寄せて、そっとキスをした。
「ちょっ、え、」
末「嫌じゃないんやろ？」
「………なんかムカつく」
末「なんで！？ちょっと応えてたやん！！」
「そっ、べつに応えてへんし！」
なんちゅーことで言い合いしてんねん、俺ら。
可笑しくて思わず笑うと、Aちゃんも同じように笑い出す。
「ごめんなさい、めっちゃタメで喋ってました」
末「ええよそんなん(笑)」
俺はその方が嬉しいけど、って言いかけて、やめた。
今でも時々タメ語っぽい時はあるけど、完全にくだけるのはいつか付き合えた時に取っておきたかった。
末「なぁ」
「なんですか」
末「俺いまけっこうドキドキしてるんやけど」
窓の外を向いたままの彼女からは何の反応もない。
さっきまでの威勢はどこ行ってん。
末「聞いてる？」
「……聞いてません。」
末「いや聞いてたやん(笑)」
「……」
末「なぁって！」
「もーうるさいなぁ(笑)」
隠せてへんで、耳赤なってるし。
恋愛では押したら引くのが大事、みたいなことをよく聞くけど、この子に対しては押しまくる方がええんちゃうかと思った。直感やけど。
末「あーあ、またちゅーしたなったやん」
「は！？」
末「ははっ、また今度な(笑)」
「いや今度って…」
相変わらず外を見たまんまの彼女から『べつに今日でもいいのに』なんて言葉が微かに聞こえてきた。
聞こえへんと思って言うてんのやろか。
嬉しくてニヤつくのを抑えながら、ひたすら車を走らせた。
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作者名：きうい | 作成日時：2022年4月23日 9時
