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｢…ごめんね｣
和｢なにが？｣
｢カズより泣いちゃって｣
和｢俺泣いてねぇし笑｣
駅まで向かう道の途中。
まだぼやけた視界の中にいる私を見て
カズは可笑しそうに笑ってる。
和｢…やっぱりAは泣き虫だな｣
｢…う、｣
和｢最近はあんまり見てなかったけど｣
｢だって、私もう先生なんだよ？｣
和｢そーじゃん！A先生の泣き虫ー！｣
｢…やめてぇ〜｣
和｢ふふ｣
夕焼けのオレンジと2つに伸びる影。
花壇に咲く花がユラユラ揺れて
私の涙を運んでいくこの街の風はあの頃と少しも変わらず
優しいままだった。
改札を通って階段を降りたら見えてくるホームには
まだ人は少なくて
お互いになんとなく何も言わずに歩くその場所は
とても静かに思えた。
.
和｢…まだ電車来るまで時間あるし、座る？｣
｢…うん｣
2人がけの椅子に腰をかけて
流れる夏の薫りを胸に吸い込む。
カズのお母さんに会って感情を抑えてた蓋が外れちゃったからかな。
それだけで、切なくて、苦しかった。
唇を強く噛んでいないと
折角引っ込んだ涙がまた込み上げてきそうだった。
固く閉じていた瞼をゆっくり開けるとその瞬間
太ももの上に置いていた手にカズの手が被さって
包み込むようにその手をぎゅっと握られた。
｢…カズ…｣
和｢…“また”、泣きそうになってんじゃん｣
｢…なってない｣
和｢唇、噛みすぎ笑｣
｢……噛んでないもん｣
和｢嘘がすげぇな笑｣
｢…｣
普通こんなになんにもないところで急に泣き出したら変に思うはずなのに
カズがあまりにも優しい顔して笑うから
余計…
潤みだした瞳からぽろぽろ溢れ出すのを止められなかった。
和｢あーあー、｣
｢…ごめ、今はこっち見ないで…っ｣
和｢…｣
｢…私多分今日…感情がバカになってる…｣
電車の到着を知らせるアナウンスが丁度響いて
｢…でんしゃ…きた｣
涙を拭おうと手を伸ばしたカズに気付かないふりして
立ち上がった。
.
なんでこんなに涙が出るのか
胸が苦しくなるほど切ない気持ちになるのか
本当はとっくに分かってるの。
この空気、この匂い
この景色
全てが｢あの日｣を思い出させては
ただでさえ乱れやすくなってる心を狙ってきたかのように
私をあの頃に
連れ戻そうとするの。
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aracick5963(プロフ) - お疲れ様でした。ときには涙しながら、ときには微笑ましくおもいながら読ませていただきました。 何度も読み返してしまいます。大ちゃん先輩もいい味だしてましたね！また、少し時間を過ごした二人がみたいとおもいます。また、会えるのを楽しみに待ってます (2020年5月25日 13時) (
レス) id: bd8f65ce45 (このIDを非表示/違反報告)
@ - 和さんが描く2人の取り巻く雰囲気は唯一無二で、毎回拝読させていただく度に涙が溢れて止まらなくなってしまいます。私もこの作品とともに成長してきた読者の1人なので、このような物語展開は大号泣してしまいました。またこの2人の今後に期待して...。お疲れ様でした！ (2020年5月21日 3時) (レス) id: 1df0870349 (このIDを非表示/違反報告)
@ - 更新が止まってしまった際、ああもう読めなくなってしまうのかななんて悲しい気持ちを抱いたこともよそにふらりと覗きにくると更新がされていることにいつも感動をしておりました。今回もふらりと数年ぶりに立ち寄ったことで完結に立ち会うことができ、嬉しい限りです。 (2020年5月21日 3時) (レス) id: 1df0870349 (このIDを非表示/違反報告)
@ - 8年もの時間をかけて素敵な作品を完結してくださり、ありがとうございます。中学生で出会ったこの作品、今となっては私も20歳を超えてしまいました。間違いなく私の青春そのものです。更新通知が届く度にお話を覗きに来ていたこと、本当に懐かしく思います。 (2020年5月21日 3時) (レス) id: 1df0870349 (このIDを非表示/違反報告)
サキ(プロフ) - お疲れ様でした。丁寧な描写と素敵な登場人物、更新されるたびにワクワクしながら拝見させていただいていました。いつか、その後の二人も短編集のような形でもよいので見れたらうれしいです。長い間、お疲れ様でした。完結おめでとうございます。 (2020年5月17日 7時) (レス) id: 5b47cf97cc (このIDを非表示/違反報告)
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