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【大西】
「…ごめん。だいちゃん、ちょっとだけ…肩を貸してください」
「ん？え？ええよ」
ファン心理が強くて、普段はなかなか自分から大ちゃんに触れたりしない朔ちゃんの言葉に驚いた。
大ちゃんの肩口に額を預けて深呼吸をする。
その、震えていた体は、大ちゃんが背中を撫でていると落ち着いたようだった。
──俺が手を握っても、肩を撫でても…震えたままやったのに。
落ち着きを取り戻せたことにはホッとしたけど。
自分じゃ安心させてあげられんのや、と…そう思うと、少し…悔しい。
気づいたら無言で腕をつかんで、自分の方へ引き戻していた。
もう半分乾いた髪を、早く乾かさな、なんて言い訳をして。
すっかりいつもの調子に戻った朔ちゃんは、また眠気に襲われているようで瞼が落ちてきた。
眠気でぽやぽやしているのをベッドに座らせ、髪にオイルを馴染ませる。
「朔、もう寝ちゃいそうやん」
「だって…だいちゃん来なかったら寝てたで…大魔王ご降臨してんねん」
「だから誰やねんて。怪しい人勝手に降臨させんといて。…もう、全部やってあげてんねんから、もうちょい頑張りや」
髪を乾かしブラシで梳いて、化粧水と乳液で肌をケアしてあげる。
瞼は既に落ちていて、完全にリラックス状態でされるがまま。
気持ちよさそうな表情に、少しだけ気持ちが軽くなる。
「ええなぁ、至れり尽くせりやん。ずるいわー、流星はほんま朔に甘すぎやで」
「りゅーせぇには、あたまあがらん…ありがとぉ、すきぃ」
寝ぼけた声で、ふふっ、と嬉しそうに笑いながら”すき”なんて言う。
ケアグッズを片付けて当の本人を見ると、もう寝ていた。
「早っ！寝る速さのびたやん。しかも俺には簡単に好きって言うてくれへんのに…」
ベッドの端に丸くなって寝息を立てる朔ちゃん。
少し拗ねたような声を出しながらも、大ちゃんは布団を掛けてあげていた。
「……けど、俺じゃ安心させてあげられへんねん…」
思わず溢れた言葉は思いの外小さくて、大ちゃんには届かなかったらしい。
なんか言うた？と聞き返してくる。
「大ちゃん、ほんまはどっちに妬いてんの？」
「どっちも！」
「即答やん」
思わず笑ったけど、寝てる朔ちゃんの髪を優しく撫でる姿に、少しだけもやもやした。
あれ、俺もどっちに妬いてんのやろ…。
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作者名：斗和 | 作成日時：2022年9月1日 22時
