なにわこじらせ女子２ (ページ1)

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記憶ページ1

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伸びてきた手から逃れるように走る

暗い道を必死に

走って

走って

走って

わたしは────…

「…っ…！…」

気付けば、見慣れない天井。

ドクドクと体中が心臓になったように脈打ち、呼吸が乱れる。
ぎゅっと胸元を握りしめて肩を上下させた。

…わたしは、見知らぬ人に追いかけられて走った。

走って、走って逃げて。

逃げた先で

「……わたし…」

車に轢かれた。

大学生だったわたし。

ざわつく胸元は握りしめたまま、片腕で目元を覆う。
長く息を吐き出すと少しずつ呼吸は落ち着いてきた。

正確には轢かれたかどうかはわからない。

最後の記憶は、眩しい車のライト。

今の私は、違う世界線のもうひとりのわたし…？

夢みたいな話。

でも実際にこの身に起きている。
こんなん…誰にも言えへん…。

やけど
あっちの世界でも、こっちの世界でもストーカーに遭うって、なんなん？

神様、わたしのこと嫌いなんやろか

でも、この世界では、わたしの為に駆け付けてくれるひと達がいる。

「……そうや…、だいちゃん、大橋君にじょうくん…」

はっとした。

巻き込みたくなかったのに結局巻き込んで…
あの後どうなったんやろうか？

３人は大丈夫なんやろか。

ガバッと身を起こすと繋がれていた点滴バッグが揺れる。

知らない天井は病院で、大きな窓からは明るい日差しが差し込んでいる。
薬液はもうすぐ落ちきる手前で、ノックの後に年輩の看護師さんが入ってきた。

「あら、目が覚めたんですね。気を失ってひと晩眠っていたんですよ」

そこからは慌ただしく、医師の診察や警察からの事情聴取。

マネージャーさんから連絡を受けたらしい両親には、病室に入るなり説教をされた…。

わたしの間違った判断のせいで沢山の人に迷惑をかけてしまったこと。
やけど、大事には至らなくて良かったと胸を撫で下ろす姿に、ほんまに申し訳なかった。

マネージャーさんからは心配の言葉と、今回の件についての説明。

わたしがジャニーズの唯一の女子という特殊な立場という事、大事にはしたくないというわたしの強い希望から、警察にも協力をお願いしてストーカー被害は公にはしない事になった。

メンバーにはマネージャーさんから説明をして貰って、暫くは体調不良という事で、お休みを頂くことが公表された。