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何時までそうしていたのか。
頭は酸欠で霞がかり、首を絞める力も無くなった手をだらんと投げ出していた。


カチャリ。鍵の開く音がした気がした。
幻聴かしら、遂に可笑しくなってしまったみたいね。本当、情けない。


「起きていたのかい?Aちゃ...」

ドアが開いて、太宰くんが見えた。
真逆幻覚まで見るとは、末期じゃない。


「どうしたの!?死○未遂...じゃないよね?
私じゃあないのだから。」



あぁ、どうしよう。これ本物だ。だって幻がこんな事言ってたら嫌よ。


『お風呂、のぼせてしまって。』
クラクラする頭で必死に考えた言い訳。
これ以上の醜態は晒せない。



「大丈夫かい?」
心配そうな顔。やめて、罪悪感で潰れそう


『大丈夫です。それより何しにうちに来たので
すか。』
嘘がバレると不味い。無理やり話を変えた。
否、気になっていたのも事実なんだけれども


「あぁ。包帯を買って来たのだよ。さっき手当
てしようと思ったらこの部屋包帯どころか消毒
液すらなかったからね」
思い出したように太宰くんが言った。


『すいません。あんまり使わないので置いてな
くって。』
色々と申し訳なくなって謝った。本当、ごめん。ぐるぐると罪悪感を含んだ思考を回していると気づいた。


『あの、太宰くん。鍵持って出て行かれまし
た?』
私の家は一応オートロックなのだ。そもそもさっきカチャリと音が鳴っていた気がする。
真逆壊してないでしょうね。


「ん?あぁ。私が家を出た時君は眠っていたか
らね。帰ってきて入れて貰えなかったら困ると
思ったのだよ。あ、ついでに合鍵作ってきた
んだった。」


『...はぁ?』
前半、人の家の鍵を持って行った理由が良く理解出来ました。ご迷惑おかけして本当にすみません。
後半、私には理解が追いつかないみたいです。
よし、決めた。思考放棄。



「うふふ。突っ込むのは諦めたみたいだね
ぇ。」


『...1人じゃ突っ込み切れませんので。』


「そうかい。取り敢えずAちゃん。傷の手
当てをしようか。」


『そうですね。自分で出来るので包帯、貸して
頂いていいですか?』


「出来るのかい?慣れていなさそうだけど?そ
れにずっと動きがぎこちない。痛むのだろう」


『包帯巻くのに慣れている人の方が少ないと思
います。』
そう伝えて、立ち上がろうとした。


「おっと。大丈夫かい?」


ニコリ、太宰くんの笑みが憎い。
──何故酸欠なのを忘れていたのか。

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作者名:とと | 作成日時:2019年9月10日 19時

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