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『ふぁぁぁ』
ぬくぬくと暖かい毛布に包まれて目が覚めた。
私、ベッドに移動した記憶はないのだけれど。
清々しい朝、とは乱れきった生活のせいでいかなかったけれど、それでも随分と心地の良い目覚めだった。
嗚呼、あの家を出た時から見ている忌々しい夢を見なかったからかしら。
そう云えばあの男──太宰君がいない。
部屋の中で視線を彷徨わせればテーブルの隅に置かれてる1枚の紙が視界に入った。
「目覚めたかい?白雪の乙女。何も言わずに出
て行ってしまってすまないね。でも安心してく
れ。また直ぐに会えるさ。待っててね白雪姫」
何処からか突っ込めばいいのか。
また会うのは別にいい。昨日私は嵌められた、清く諦める。それに最早危険性は感じていなかったから。
でも乙女って何。白雪姫ってどうした。ギザすぎますよ。太宰くん。
───────
体に纏わりつく布、ぼんやりとした頭をどうにかしたくてシャワーを浴びに来た訳なのだけれども
『嗚呼、これじゃ今日は誰にも会えないわ
ね。』
酷い様だった。
乱れきった髪、首に付いた赤いあと、顔の傷。頬は腫れ、身体中には痣。
髪だけなら寝起きって言い訳出来るとしても。
こんな姿で太宰くんと話していたのか。欠片も可愛くない。
あの怖い綺麗なお姉さんに作られた傷口に冷水を当てた。
『ツッ...ァ』
痛い。とても痛い。人の愛を壊した代償。重い
本当はもっと重い。嗚呼今更辛くなってきた。
可哀想なお姉さん。馬鹿な小娘に大切な家庭を壊されて。綺麗な人だったのに。私のせいでどれだけ傷ついたのか。御免なさい。
急に怠くなった身体を無理やり動かし、水を止め、服を纏った。
まだ濡れたままの手でスマホを持ち上げた。
大量のアイシテくれる人の連絡先が入ったそれ
その中から1つを選び、今日は会えないと伝え
る。
本当に愛してくれる人のいない連絡先。
でも1人よりはマシだから。だから、続けるの。
これからも、人を傷つけるって分かってる癖に
罪悪感を抱いてる癖に。1つの連絡先も消さないままに
嗚呼、あの子の方がずっとマシじゃない。私は醜い。
そっと首に手を回して、力を込めた。
『ァ...』
誰もいない1人の部屋。
もっと寂しく苦しめばいい。
何て、私は耐えれる気もしないのだけれども
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作者名:とと | 作成日時:2019年9月10日 19時