緑の楽園1-9 ページ36
見張り台の上からぼんやりと海を眺める。
ついこの間には悲惨な光景を見たのに、そんなことすら忘れてしまうくらい穏やかな景色だった。
誰かが足音を立てないようにこっそりと上がってくる音が聞こえてくる。少し甘い香りだ。おそらく枢機卿だろう。
『隣どうぞ』
「どうも」
話しかけるとこっそり登るのをやめて足音が響く。けれどその音に違和感があり、目を向けると枢機卿は松葉杖をついていた。
あの階段を音を立てないように上がっていたなんて正直驚いた。
『よくそれで上がってきましたね』
「君はここにいると聞いたからね」
彼は私を探していたのか…。
悪い事をした、と思い彼を見ると察したのか"気にしなくていいよ"と笑った。
「君の、昔の話を聞いた。」
昔…と言うとやっぱり兵の国の時だろうな。正直、思い出したくない事の方が多いけれど、総統との出会いの地だから大切な場所でもある。
懐かしいな…もう何年も前のことなのに。
ふいに腕をひかれ、枢機卿の腕の中に引き込まれる。
『え、っ…あの!?』
背中に回された腕が逃がさないように力が込められていく。私の力なら抜け出すことなんて簡単だろう…けれどそれが出来ないのは彼がからかう訳でもなく、真剣にこうしているから。
「君は…強い子だね」
抱きしめたまま彼は私の頭を撫でる。しばらくそうしてると"これが最後だから"と聞こえなんの事か一瞬分からなかった。
『枢機卿?』「君に。……Aに」
彼に聞く前に言葉が被せられ、頭を撫でる手が止まった
「神の御加護がありますように。」
そう言い終えると枢機卿から解放される
「これで俺はただのオスマン。オスマンって呼んでくれると嬉しいな」
彼は私を見て笑った。
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きむち鍋(プロフ) - 紫さん» コメントありがとうございます。セリフ調になっているのがとても可愛らしいですね! (2020年12月30日 18時) (レス) id: 4e029fbece (このIDを非表示/違反報告)
紫 - os 「続きが気になるめう〜」gL「頑張ってくれ!」紫『面白かったです♪、、、せーの』「「『これからも宜しくお願いします!』」」 (2020年5月9日 23時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
きむち鍋(プロフ) - ノリシロさん» コメントありがとうございます! こういったジャンルは初めてですので至らぬ点もありますが、のんびりと更新させていきますので、ゆったり楽しんでいただけたら幸いです! (2019年2月25日 11時) (レス) id: 82753cc095 (このIDを非表示/違反報告)
ノリシロ(プロフ) - 設定や一つひとつの表現に人物たちの感情が滲んでいる感じがしてすごく好きです!!
更新楽しみにしてます、頑張って下さい! (2019年2月24日 14時) (携帯から) (レス) id: 2e9ea22d03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きむち鍋 | 作成日時:2018年8月28日 20時